近年、「電動化」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
特に自動車業界では、**CASE(Connected・Automated・Shared・Electric)**の”E”、すなわち「Electric=電動化」がキーワードとなっています。
この記事では、電動化が意味するもの、現状の課題、そして次世代技術「全固体電池」について、最新情報を交えて解説します。
■ 電動化とは何か?
「電動化」とは、車の動力源をガソリンやディーゼルなどの内燃機関から、電気モーターを主とするシステムに置き換えることを指します。
ここには、完全な電気自動車(EV)だけでなく、ハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)も含まれます。
トヨタやホンダ、日産など日本メーカーをはじめ、欧米や中国の各社も電動化シフトを加速中です。
特に2024年以降、各国政府の排出規制強化やEV補助金制度の見直しにより、電動車市場は大きな転換期を迎えています。
■ EV(電気自動車)のメリット
- CO₂を排出しない走行
- モーター走行のため、走行中に排出ガスを出さず、地球温暖化対策に貢献できます。
- 静粛でスムーズな走り
- エンジン振動がないため、静粛性が高く、快適な乗り心地が特徴です。
- 電子制御との親和性
- 各種センサー(速度、加速度、温度など)と連動して、駆動・制動・ステアリングを電気的に制御できます。
これが「CASE」の**C(コネクティッド)やA(自動運転)**とも密接に関係します。
- 各種センサー(速度、加速度、温度など)と連動して、駆動・制動・ステアリングを電気的に制御できます。
■ EVのデメリットと課題
- 充電時間と航続距離
- 現在主流のリチウムイオン電池では、急速充電でも30分以上、航続距離は約400〜600km前後が一般的です。
- 電池の安全性
- 過充電や高温時に発火のリスクがあるため、温度管理が不可欠です。
- 電池コストの高さ
- バッテリー価格が車両価格の3〜4割を占める場合もあり、車両価格を押し上げています。
- 発電段階のCO₂排出
- 日本では2025年時点で発電の約77%が火力発電(経産省統計)。
走行中にCO₂を出さなくても、発電時に排出しているという課題があります。
- 日本では2025年時点で発電の約77%が火力発電(経産省統計)。
- 充電インフラの不足
- 公共急速充電器は全国で約31,000基(2025年9月時点/経産省)。
増えてはいますが、ガソリンスタンド数(約27,000箇所)と比べて利便性はまだ低いのが現状です。
- 公共急速充電器は全国で約31,000基(2025年9月時点/経産省)。
- ハッキングリスク
- 電動化+コネクティッド化の進展により、サイバー攻撃対策も新たな課題となっています。
■ 次世代の鍵:全固体電池とは?
EV普及の最大のボトルネックは「バッテリー性能」です。
現在注目されているのが、**全固体電池(Solid-State Battery)**です。
◎ 全固体電池の特徴
液体電解質を使わず、固体の電解質でイオンを伝達します。
これにより、安全性・充電速度・容量の面で大きな進歩が期待されています。
メリット:
- 発火リスクが低く安全性が高い
- 超急速充電が可能(5〜10分充電構想)
- エネルギー密度が高く、航続距離の大幅延長が期待
- 長寿命で劣化しにくい
- 設計の自由度が高く、軽量化も可能
デメリット:
- 電極と電解質の接触抵抗が大きく、量産化が難しい
- 製造コストが高い
■ 最新動向:量産化のカギを握るのはいつ?
トヨタは2024年に「全固体電池の2027〜2028年商用化」を発表し、試作レベルでは1,000km以上の航続距離を目指しています。
日産も同様に横浜に試作ラインを設け、2028年の量産化を計画。
一方、中国CATLや韓国のサムスンSDIも開発を加速しており、アジアが全固体電池競争の中心となっています。
■ 電動化の未来を考える
電動化は単に「エンジンが電気になる」だけではなく、
クルマそのものが**「電子制御+データ連携+再エネルギー利用」**の総合システムになることを意味します。
EVが本当に環境に優しい存在になるためには、
- 再生可能エネルギーでの発電比率の拡大
- 廃バッテリーの再利用・リサイクル技術
- サイバーセキュリティの強化
といった複合的な取り組みが欠かせません。
■ まとめ
| 観点 | 現状の課題 | 今後の展望 |
|---|---|---|
| 電池性能 | 航続距離・充電時間 | 全固体電池で大幅改善 |
| 安全性 | 発火リスクあり | 固体電解質で安全性向上 |
| 発電構造 | 火力依存 | 再エネシフト進行中 |
| コスト | 高価格帯 | 量産化でコスト低下へ |
🌱筆者の考え
今後のEV普及の鍵を握るのは「バッテリー」と「エネルギー源」の2点です。
全固体電池が実用化され、再生可能エネルギーが主電源となる日が来れば、
真の意味でのゼロエミッションモビリティが実現するでしょう。
Technology / テクノロジー:電動化とは、クルマが“走る機械”から“動く電子デバイス”へ進化する過程そのものです。

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