エンハンストゲームズとは
「エンハンストゲームズ(Enhanced Games)」は、オーストラリアの実業家アーロン・デスーザ氏が提唱する新しい国際競技大会で、2026年5月21日から24日にかけて、アメリカ・ラスベガスの「リゾート・ワールド・ラスベガス」で初開催される予定です。
この大会の最大の特徴は、従来の国際大会で禁止されてきたドーピング(薬物使用)を容認する点にあります。公式には以下の種目が実施予定です。
- 陸上競技:100m走、100mハードル、110mハードル
- 競泳:50m自由形、100m自由形、50mバタフライ、100mバタフライ
- 重量挙げ:スナッチ、クリーン&ジャーク
主に短距離や爆発的パワーを要する種目が中心となっているのも特徴的です。
きっかけと話題性
大会PRの一例として、ある元オリンピック選手が薬物使用後に水泳50m自由形で20.89秒を記録し、世界記録(20.91秒)を上回ったというニュースが報じられました。
こうした「薬物強化による新記録の誕生」は注目を集める一方で、国際オリンピック委員会(IOC)や世界アンチ・ドーピング機関(WADA)は強く批判しています。

提唱者の思想と理念
デスーザ氏は「My body, my choice(私の身体は私の選択)」を掲げ、以下のような主張をしています。
- どのように自分の身体を強化するかは個人の自由である
- 現在のアンチ・ドーピング制度は不合理で非科学的な側面がある
- エンハンストゲームズは、人間の潜在能力を極限まで引き出し、スポーツの可能性を再定義する場になる
理念としては、個人の自由を最大限に尊重する立場が強調されています。
深刻な懸念点
しかし、この構想には数々の懸念が指摘されています。
- 安全性の不透明さ
- 医師の監督下で薬物を使用するとされていますが、管理体制やガバナンスは未定。
- 長期的な副作用や依存性を防ぐ保証はなく、健康被害の責任も不明確です。
- スポーツの倫理と公正性
- スポーツが長年守ってきた「公正さ」や「身体の安全」という価値を根底から揺るがすおそれがあります。
- 社会的影響
- 若年層や経済的に脆弱な選手が「勝つために薬物を使わざるを得ない」状況に陥る可能性。
- SNSなどを通じて薬物強化の様子が拡散すれば、模倣する若者が現れるリスクもあります。
一部の肯定的評価
否定的意見が大半を占める中で、一定の評価も存在します。
- 既存のアンチ・ドーピング体制の問題点を浮き彫りにする契機になりうる
- 禁止薬物リストの妥当性や、治療目的使用(TUE制度)の硬直性など、従来の制度改革につながる可能性
つまり「過激な挑戦」が、逆説的に現行制度の見直しを促すかもしれないのです。
筆者の考察
エンハンストゲームズは、スポーツの未来像をめぐる非常に挑発的な実験です。
しかし、私には「世界武器展覧会の薬物版」のようにも映ります。
- 一瞬の競技記録のために、選手が命を縮める危険を冒す
- 未成年や社会的弱者が巻き込まれるリスク
- ヒーロー視される選手の影響力が、社会全体に負の波及効果を与える可能性
これらを考えると、単なる「自己決定権」では済まされない大きな問題を抱えているように思えます。
まとめ
- エンハンストゲームズは2026年5月にラスベガスで初開催予定
- 最大の特徴はドーピングを容認すること
- 理念は「個人の自由」だが、安全性や倫理的課題が山積
- 社会的影響も大きく、スポーツ文化そのものを揺るがす可能性がある
スポーツは単なる記録競争ではなく、社会規範や文化をも形づくる存在です。
だからこそ、この新しい試みをどう受け止めるのか、私たち一人ひとりに問われているのではないでしょうか。
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