公園や道路沿いで、夏から秋にかけてピンクや赤、白の花を咲かせる「キョウチクトウ」。
一見すると鮮やかで美しい花ですが、実は「強い毒」を持つ植物であることをご存じでしょうか。
この記事では、キョウチクトウの特徴や歴史、そして注意すべき毒性についてわかりやすくまとめました。
キョウチクトウの特徴
キョウチクトウ(夾竹桃)はインド原産の常緑低木で、暑さや乾燥、大気汚染にも強く、街路樹や公園の緑化に広く使われています。丈夫で育てやすいため、千葉市・尼崎市・鹿児島市など複数の都市で「市の花」にも制定されています。
初夏から秋にかけて咲く華やかな花は、市民の目を楽しませ、夏の風物詩ともいえる存在です。
復興の象徴「広島の市花」
キョウチクトウは、その生命力の強さから「復興の象徴」としても知られています。
広島市では、原爆投下後「75年間は草木も生えない」と言われた焦土で、翌年に花を咲かせ、市民に大きな希望を与えました。その出来事をきっかけに「広島市の花」として制定され、今も平和を象徴する植物のひとつとなっています。
強い毒性 ― 美しさの裏に潜む危険
しかし、その美しさの裏側には危険が潜んでいます。
キョウチクトウの根、茎、葉、花のすべてには「オレアンドリン」という猛毒成分が含まれています。毒性は青酸カリを上回るとされ、体重1kgあたり約0.3mgで致死量に達するといわれています。
摂取すると、不整脈や心停止などの重篤な症状を引き起こすことがあり、少量でも危険です。

実際に起きた事故や事件
過去には以下のような事例が報告されています。
- 千葉県市原市(2024年):高校生がキョウチクトウの葉をみそ汁に混入し、伯父を殺害しようとした事件。致死量に相当する量が使われていました。
- 香川県高松市(2016年):小学生2人が校庭のキョウチクトウを誤って口にし、食中毒で入院。
- 燃やした煙で中毒:枝を燃やした煙を吸い込んで体調を崩した例も報告されています。
また、犬が散歩中に枝や落ち葉を口にして中毒症状を起こすケースもあり、ペットを飼っている方も注意が必要です。
他の有毒植物との比較
キョウチクトウに限らず、身近な植物の中には強い毒を持つものがあります。
- イヌサフラン:タマネギやギョウジャニンニクと間違われやすく、食中毒で死亡例も多数。
- スイセン:葉がニラに似ており、誤食すると嘔吐や下痢、重症化すれば死亡することも。
- バイケイソウ、ユウガオ:観賞用や野草と誤解して食べ、中毒になる事例が報告。
厚生労働省によると、過去10年間で726人が有毒植物を誤食し、18人が命を落としています。
日常生活での注意点
キョウチクトウをはじめとする有毒植物から身を守るために、次の点を意識しましょう。
- 不用意に植物を口にしない(特に野草採りやキャンプ時)。
- ペットが落ち葉や枝を口にしないよう散歩中は注意する。
- 庭木や学校、公園の植栽に有毒植物がある場合は、子どもにも危険性を伝える。
- 万が一口にしてしまった場合は、自己判断で吐かせず、すぐに医療機関を受診する。

まとめ
キョウチクトウは、街を彩る美しい花であり、広島の復興を象徴する特別な植物でもあります。
しかし同時に、強い毒を持つ危険な一面もあり、誤食や誤った扱いが命に関わることもあります。
身近にある植物だからこそ、正しい知識を持って接することが大切です。
自然の美しさを楽しみつつ、安全に暮らしていきたいですね。
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