テスラか、BYDか、どうなる自動車業界?

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https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/3e/BYD_Atto_3_1X7A6491.jpg
https://www.byd.com/content/dam/byd-site/eu/blog/assets-without/tech/BYD-Blade-Battery-pc.jpg

近年ますます存在感を高める電気自動車(EV)市場。その中で、米国の Tesla と中国の BYD(比亜迪/バイド)が、世界の自動車業界の“今後”を左右する二大プレーヤーとして注目を集めています。今回は「テスラか、BYDか」というテーマで、それぞれの特徴、および今後の展望を整理し、最新データも交えてお話しします。


用語略語リスト

本記事で頻出する用語を先に整理します。

  • BEV:Battery Electric Vehicle(バッテリーだけで走る電気自動車)
  • PHEV:Plug‐in Hybrid Electric Vehicle(プラグインハイブリッド車)
  • NEV:New Energy Vehicle(新エネルギー車。EV+PHEVを含む)
  • OTA:Over-The-Air(ソフトウェアをネット経由で更新)
  • kWh:キロワット時(バッテリー容量を示す)
  • LFP:Lithium Iron Phosphate(リン酸鉄リチウム電池)

BYDの会社概要と最近の動き

まず、BYDについて改めて整理しましょう。

https://autodesignmagazine.com/wp-content/uploads/2024/01/WhatsApp-Image-2024-01-16-at-07.06.42-1.jpeg
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https://www.electrive.com/media/2021/03/byd-blade-batterie-battery-2021-01-min-e1707131004490.png
  • BYDは中国語で「比亜迪(バイド)」と読み、1995年に携帯電話用バッテリーを製造する企業として設立されました。
  • 2003年に中国国内の自動車メーカーを買収して自動車生産に参入。独自開発した「ブレードバッテリー(Blade Battery)」を武器に、長距離走行可能なBEVの実現を図っています。
  • 特筆すべき点として、2022年3月に主要自動車メーカーとしては世界で初めてエンジン車の生産を終了しました(つまり内燃機関車を止め、NEV中心へシフト)と報じられています。
  • ブレードバッテリーはその形状(刀/ブレードのように細長く、平らな“セル”を効率よく収めたもの)により、従来のモジュール化構成よりもセル数を増やせる、また車体構造の一部として利用できるなど、設計自由度・安全性ともにメリットがあります。

最近のアップデートポイント

  • BYDは「Blade 2.0」と呼ばれる次世代バッテリー技術を2025年に向けてアナウンスしており、従来比でエネルギー密度+40%、充電/放電性能・耐久性も改善されていると報じられています。 V2C
  • また、将来的に ソリッドステートバッテリー(固体電池) のテストも進んでおり、「最大1,500 km走行可能」のレンジを想定した試作が報じられています。 The Driven
  • 販売実績でも、2024年にBYDは世界でBEV/PHEV合計で3~4百万台規模の販売実績を挙げ、2025年第1四半期にはBEVだけでグローバルシェア15.4 %を獲得し、同四半期でTeslaを上回ったと報じられています。 CnEVPost+1
  • 2025年3四半期(Q3)まで累計では、BYDのBEV販売が約1.6059 百万台に達し、Teslaの1.2179 百万台を約38.8万台上回ったと報じられています。 CarNewsChina.com

テスラ(Tesla)の現状と特徴

次に、Teslaの状況を整理します。

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主な強み

  • TeslaはBEV(バッテリーEV)に特化しており、プラグインハイブリッドを含まないモデル構成。
  • 自動運転支援機能(Autopilot/Full Self Driving)やOTAアップデート、グローバルなブランド認知度の高さなどが大きなアドバンテージ。
  • 航続距離や充電インフラの使いやすさ、グローバル展開の速さでも一定のリードがありました。

最近の課題・懸念

  • 中国市場・欧州市場において、Teslaの中国製車(上海工場生産)の販売が前年同期比で減少しているという報道があります。例えば、2025年5月、中国でのTesla車の販売台数は61,662台で、前年同月比15 %減少となっています。 CnEVPost
  • 欧州では2025年5月、英国・ドイツ・イタリアなど主要市場でTeslaの販売が5か月連続で前年割れという報道も。 Reuters
  • 一方で、BYDなど中国勢が低価格帯およびモデルの幅拡大で急成長しており、Teslaの“価格/モデル戦略”や“ブランド差別化”が相対的に問われています。 International Banker+1

日本市場におけるBYD vs Tesla

日本市場でも両社の動きが注目されています。

  • BYDは日本市場参入を進めており、例えば「ATTO 3」などを投入して価格競争力あるモデル展開を開始しています。
  • Teslaも「Model Y」などで存在感を保っていますが、日本市場では充電インフラ、価格、車種展開、補助金・税制などのローカル要因も購入判断に大きく影響します。
  • 日本の充電インフラ整備の進展(特に公共急速充電/住宅充電など)がEV購入判断の重要なファクターです(世界的にも2025年にはEVが車販売の25%以上を占める見込み) IEA

BYD ATTO 3 vs Tesla Model Y(日本発売開始クラス)比較

ご提示の「ATTO 3」と「Model Y」を改めて整理し、比較ポイントを挙げます。

項目BYD ATTO 3Tesla Model Y(Base)
価格帯Model Yより約200万円安いという情報あり価格は高め(差あり)
車両重量比較ではATTO 3が軽いという前提(約180 kgの差)その分効率が変わる可能性あり
バッテリー容量/モーター出力/航続距離モーター出力で70 kW・航続距離で92.4 kmの差との記述あり航続距離605 km(ロングレンジAWD)という情報もあり
特長ブレードバッテリーを搭載し安全性・設計自由度ありオートパイロット・OTA更新などソフト面で優位とされる

※実数値に関しては「70 kW」「92.4 kmの差」という数字がユーザー提示としてありますが、実際のカタログ値・条件(WLTP/JC08など)で異なる可能性がありますので、購入検討時には最新仕様を確認ください。

解説ポイント

  • ATTO 3のメリットは、価格を抑えつつ比較的良好な仕様を出してきている点。特にバッテリー設計(ブレードバッテリー)による安全性・スペース効率向上が期待されます。
  • Model Yのメリットは、ブランド力・充電インフラ整備(Teslaのチャデモ/スーパーチャージャー網)・先進運転支援機能(オートパイロット)・長い航続距離のモデル設定があるという点です。
  • ただし価格差・インフラ充実度・モデルラインナップ・サービス網などを含めて総合的に判断する必要があります。

今後の自動車業界展望 — 「テスラか、BYDか」から見えること

この2社の競争から、自動車業界がどう変わっていくのかを整理します。

1. グローバルEVシェアの変化

  • 世界のEV市場全体(2025年1〜3月)では、前年比で35%増加。特に中国が販売の60%以上を占めるというデータがあります。 IEA
  • 2025年第1四半期、BYDはBEVでグローバルシェア15.4%を獲得、Teslaは12.6%。 CnEVPost
  • 2025年第3四半期までの累計では、BYDがTeslaを約40万台近く上回るという報道も。 CarNewsChina.com
    → つまり、EV市場において「Tesla一強」という構図が揺らぎつつあり、BYDが乗り込んでいるという状況です。

2. 技術・バッテリー競争の激化

  • BYDのブレードバッテリー、さらに次世代バッテリー(Blade 2.0/固体電池)の開発が進んでおり、車載バッテリー技術における優位性が強まっています。
  • 一方、Teslaもバッテリー供給・自社開発(NCM系からLFP系へのシフト)/充電ネットワーク構築などを継続していますが、相対的に“速さ”や“幅”で差を取られつつあるという報道もあります。 The Driven+1
    → バッテリーの設計・量産・コスト競争が今後のEV普及・マージン確保・モデル価格設定において大きな鍵になります。

3. モデル展開・価格戦略・地域別戦略

  • BYDは中国をベースにして、価格レンジを幅広く、かつグローバル展開(特に欧州、東南アジア)を加速しています。例えば欧州での登録でも、Teslaを上回ったという報道あり。 Reuters+1
  • Teslaは高価格帯のプレミアムEVと、モデル数を絞った展開でブランド価値を維持してきましたが、これからの普及段階では“低価格モデル/量販モデル”での競争も重要になりつつあります。
  • 日本を含む各国では、補助金・税制・インフラ整備・ローカルブランドの存在など“地域要因”がEV普及に大きく影響します。購入時期・モデル選びにおいては「地域インフラ」「価格」「車種ラインナップ」の3つを必ずチェックすべきです。

4. 購入時期/インフラ整備の観点からのアドバイス

  • 筆者としては、EV導入を検討する際には「充電ステーション・インフラが十分整うまで、市場動向を少し傍観する」というのは合理的な判断と考えます。
  • ただし、価格競争・モデル改善・充電網拡充のスピードを見ると、今後数年で“買い時”のモデルが出揃ってくる可能性が高いです。
  • “焦らずに、しかし情報を押さえておく”という姿勢が良いでしょう。
  • また、既に購入を考えている方には、上述のような低価格モデル/量販モデルに強いBYD、それをプレミアム・ブランド・機能で守るTeslaという選択肢が出てきています。

まとめ

今回、「テスラか、BYDか」という観点で整理してみて感じたことは以下の通りです:

  • BYDの技術力、特にバッテリー開発・量産体制・価格戦略における“追い上げ”が非常に速く、既にTeslaを上回る実績を出しつつあります。
  • Teslaはブランド・ソフトウェア・充電インフラ・航続距離などの優位性を維持していますが、今後は“量産・低価格モデル”や“価格競争”という点で挑戦を受ける局面にあります。
  • 自動車業界全体では「EVの普及スピード」と「地域インフラ整備」が鍵となり、技術・コスト・政策・消費者意識の4つが複合的に作用しています。
  • 特に日本市場でEVを考えるなら、モデル選びだけでなく「充電インフラ」「補助金・税制」「サービス体制」「将来的なリセールバリュー」まで含めて検討することが重要です。

最終的に、「どちらが勝つか」というよりは「どちらを選ぶか・どのタイミングで選ぶか」がイメージしやすいかもしれません。皆様の自動車に対する関心を深める一助となれば幸いです。

プロフィール
著者
diamondken

完全FIREを目指している一般独身男性。
約30年、自動車業界/外資系自動車部品メーカーに従事。
自動車用電装部品の開発にてSW, HW, SYS, PMを経験/担当し今に至る。
趣味はテニス、映画/音楽鑑賞、ゲーム(PS)、読書、旅行、楽器/エレキギターなど。
完全FIRE/経済的自立を実現すべく、資産運用、副業、投資、税金について勉強中。
TOEICスコア: 960

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