冬が近づくにつれて注意が必要になるのが「ノロウイルス」。
毎年この時期、飲食店や家庭内での集団感染がニュースになります。
2025年9月にも、愛知県あま市の加工施設が製造した“大根おろし”が原因とみられる集団食中毒が発生。259人が体調を崩し、検査でノロウイルスが検出されました。幸い重症者はいなかったものの、改めて感染経路への警戒が高まっています。
その中で見落としがちな「感染の盲点」として、今回はスマートフォンに焦点を当てます。
ノロウイルスとは? ― わずか100個で感染する強力なウイルス
名古屋文理大学短期大学部の佐藤生一名誉教授によると、
ノロウイルスは「わずか100個程度」が体に入るだけで発症するほど感染力が強いといいます。
しかも、寒さと乾燥に強いため、冬季(特に11月〜2月)に発生が集中。
厚生労働省の統計では、食中毒全体の約6割がこの時期に発生しています。
ノロウイルスの恐ろしい点は、食品の見た目や臭いに変化がないこと。
腐敗臭もしないため、食べて初めて感染に気づくケースが多いのです。
感染経路は「人から人へ」 ― ドアノブ・タオル・そしてスマホ
ノロウイルスは食品だけでなく、人の手を介して広がるのが特徴です。
トイレの後や調理前に十分な手洗いをしていない場合、ウイルスが手に残り、
ドアノブやタオル、食器などを介して感染が広がります。
そして近年、専門家が警鐘を鳴らすのが――スマートフォンの汚染です。
感染の盲点「スマホ」 ― トイレや食事中に触るのは危険!
あなたは、トイレや調理中にスマホを触っていませんか?
実はその行為こそが、ノロウイルス感染の“見えない経路”になっています。
多くの調査で、スマホの画面には便座より多くの菌が付着しているともいわれます。
米国の研究(University of Arizona, 2023)では、
スマートフォンの表面から1平方センチメートルあたり約2万個の細菌が検出されました。
トイレでスマホを操作 → 手にウイルスが付着 →
そのまま食材や口に触れることで、感染が成立してしまうのです。
筆者自身も、トイレでスマホを操作する人をよく見かけます。
中には、手を洗わずにトイレを出る人が5人に1人程度いる印象です。
これでは、スマホが“持ち歩く感染源”になっても不思議ではありません。
ノロウイルス対策の3つの基本 ― 「手洗い・加熱・消毒」
厚生労働省および食品安全委員会が推奨する基本対策は、以下の3つです。
1. 正しい「手洗い」を2回行う
石けんと流水で30秒以上。
1回目で汚れを浮かせ、2回目でウイルスをしっかり流すのがポイントです。
つめの間や手首まで丁寧に洗いましょう。
2. 「しっかり加熱」する
ノロウイルスは熱に強いため、中心部を85〜90℃で90秒以上加熱。
特に生ガキなどの二枚貝類はしっかり火を通すことが大切です。
3. 「正しい消毒」を行う
アルコール消毒は効きにくく、**次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)**が有効です。
調理器具やまな板は定期的に消毒し、使用前には流水で再度洗いましょう。
スマホの正しい衛生管理 ― 毎日の「拭き取り」が大切
スマートフォンの除菌には、アルコール70%前後のウェットティッシュや
除菌対応クリーナーを使うと効果的です。
AppleやSamsungなど主要メーカーも、
「画面は1日1回以上、電源を切って柔らかい布で拭き取る」ことを推奨しています。
特に注意したいのは次のシーンです。
- トイレ使用後にスマホを操作したとき
- 調理中や食事中にレシピやSNSを確認したとき
- 公共交通機関や飲食店でスマホを置いたとき
これらの場面では、その都度、手とスマホの両方を清潔にする意識が大切です。
まとめ ― 「手洗い」+「スマホ衛生」で感染を防ぐ
ノロウイルスをはじめ、インフルエンザや新型コロナなど
冬に流行するウイルスは、どれも「接触感染」で広がるリスクがあります。
手洗い・加熱・消毒という基本に加えて、
“スマホの衛生管理”を日常の習慣に取り入れることが、
これからの季節の感染対策として非常に有効です。
目に見えないウイルスは、意外なところに潜んでいます。
今日からぜひ、手とスマホ、両方の清潔を意識して過ごしてみてください。
🔍参考文献・出典
- 厚生労働省「ノロウイルスによる食中毒を予防しましょう」(2024年版)
- 名古屋文理大学短期大学部 佐藤生一名誉教授コメント(2025年9月)
- University of Arizona, “Cell Phones as Bacterial Reservoirs” (2023)
- Apple公式サポート「iPhone のお手入れについて」(2024年版)

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