大きな地震や火災、事故などの映像や速報が続くと、直接の被害がない場所に住んでいても胸が重くなり、画面から目が離せなくなることがあります。「見ておかないと」「現実を知る義務がある」と自分を追い込んでしまい、気づけば疲れ切っている——それは“弱さ”ではなく、人に備わった共感の働きが原因であることが多いです。映像は身体感覚に近い形で脳に届き、擬似的にその場にいるように感じさせるため、心理的負担が生じやすくなります。
なぜつらくなるのか(短く整理)
- 共感装置が作動する:被災者の痛みや恐怖を自分ごとのように受け取ってしまう。
- 繰り返しの映像で処理時間が奪われる:同じ映像や速報が何度も流れると、心が情報を消化する“余白”を失う。
- 不安の連鎖:過去の苦い記憶や、未来への不安が同時に呼び起こされやすい。
これらは病気ではなく、むしろ「人として自然な反応」です。
今すぐできる“安全基地”の作り方(具体的・実用)
- 情報の窓口を決める
全メディアを追うのではなく、信頼できる情報源(自治体/NHK/主要紙など)1〜2つだけに絞り、「朝と夕方に15分だけ」など時間を区切って確認しましょう。 - 短い“画面断ち”を入れる
ツール(アラームやスマホの画面タイマー)で「情報確認の終了」を自動化し、強制的に距離を作る。画面を閉じて深呼吸を3回するだけでも回復につながります。 - “できること”に注目する小さな行動リストを作る
防災バッグのチェック、家族の連絡手段の確認、近所の避難場所の確認など、今すぐできる1〜3項目を紙に書いて実行する。行動が不安を和らげます。 - 感覚リセットを取り入れる(1分〜5分)
・窓を開けて外の空気を吸う、手を冷たい水で洗う、短い散歩をする、好きな音楽を1曲聴く、など五感に働きかける方法を用意する。 - 情報を共有しすぎない
SNSで繰り返し被災映像を流す・拡散する行為は、本人にも他者にも負担になります。拡散前に一呼吸。必要な支援情報だけを共有する習慣を。
専門家がすすめる“やさしい距離の取り方”(PFAなどの考え方)
国際的に推奨されている**心理的応急処置(PFA)**は、被災直後の人への支援だけでなく、情報に心を痛めている人自身のセルフケアにも応用できます。「まずは安全と安定を整える」「実際に役に立つ具体的援助に注目する」「必要な時に専門支援へつなぐ」といった原則は、テレビやSNSの過剰な接触で消耗しているときの指針になります。
家族や周囲への接し方(支援者として)
- 無理に「大丈夫?」と何度も聞かない。静かにそばにいることが力になる場合が多い。
- 話したければ受け止める。話したくなければ一緒にお茶を飲むなど距離の取り方を尊重する。
- 子どもには大人向けの過激な映像は見せない。子ども向けに事実を簡潔に伝え、不安感を和らげる行動(抱きしめる、日常のルーティン)を優先する。
こんなときは専門家に相談してください
以下のような状態が2週間以上続く、日常生活に支障が出る場合は、早めに医療や相談窓口に連絡を:
- 睡眠が極端に取れない/日中の機能低下が起きている。
- 食欲が落ちて体重が著しく減った/逆に過食が止まらない。
- 自傷や自殺について考える頻度が増えた。
日本では自治体の保健所、精神保健福祉センター、かかりつけ医に相談できます。緊急の場合は119(救急)へ。PFAや地域のこころの相談窓口も活用を。
日々の習慣で負担を減らす(継続しやすいヒント)
- 情報デトックス日を週に1日設ける(テレビやSNSを断つ日)。
- 夜は寝る2時間前から速報音をオフにする。
- 1日1つだけ「誰かのためにできること」を実行する(寄付・近所の安否確認・情報の正確さをチェックして拡散防止)。行動は気持ちを落ち着けます。
最後に(筆者の一言)
筆者も、世界の火災や地震、政治的緊張のニュースで心が重くなる一人です。つらいときに「自分は無力だ」と感じることがあるかもしれませんが、自分の心を守ることは無責任ではありません。距離を取りつつ、できる範囲で助けにつながる行動を取る——そのバランスを少しずつつくっていきましょう。小さな休止を許すことが、長く誰かを支えられる力になります。
参考・さらに読む(抜粋)
- メディア報道と心理的影響に関する研究(学術論文)。
- PTSD/VA:災害報道が心に与える影響と対処法。
- 厚生労働省ほか:心理的応急処置(PFA)やこころのケアのガイド。
- APA:メディア過多によるストレスとガードレールの設定。
- Mind(UK):ニュースで苦しくなったときの実践的なコーピング。

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