2025年に入り、日中関係は政治・外交面で急速な冷え込みを見せています。
そのきっかけのひとつが、高市総理による「台湾有事」に関する発言。これに反発した中国政府は、自国民に向けて“日本への渡航自粛”を呼びかけました。
しかし、実際の観光地では少し異なる光景が広がっています。
■ 富士山5合目は“いつも通り”──観光客は本当に減っているのか?
ニュースの現地レポートによると、2025年2月22日時点の富士山吉田ルート5合目には、
例年と変わらない数の中国人観光客が到着。
中国人観光客
「治安が良いし、食べ物も美味しい。渡航自粛は気にしてない」
つまり、個人旅行者(FIT)は政治状況による影響をあまり受けていないことがわかります。
実際、2024年10月時点での中国からの訪日客は 約820万人。
そのうち団体旅行は**わずか12%**で、残りは個人旅行者という状況です。
■ 影響を強く受けているのは“団体旅行”依存の企業
一方で、影響が明確に出ている業種があります。
● 都内バス運行会社:
中国の航空会社が日本便の削減を検討し始めた結果、
大型バスの予約が次々キャンセルに。
「合計で4000万円ほどの損失が出る見込み」
団体ツアー依存の企業は、この一点で脆弱性が顕在化しました。
● 富士山麓のホテル:
外国人の8割が中国人だった宿泊施設では、12月以降の個人客のキャンセルも発生。
明らかに「中国依存リスク」が表面化しています。
■ 外交面の緊張──“戦狼外交”の影響が日本にも
今回の行動は、中国が2017年以降強めたと指摘される
**「戦狼外交(Wolf Warrior Diplomacy)」**の延長と見られています。
特徴は以下の通り:
- 協調より“国益・威圧”を優先
- 露骨な強気姿勢(例:過激なSNS投稿、外交席上での横柄な振る舞い)
- 国内向けの“強い中国”アピールによる政治的メリット
ただし専門家は、この姿勢が長期的に通用するとは見ていません。
「海外投資が減れば中国経済にも痛手。ゆくゆくは外交姿勢を軟化させざるを得ない」
とはいえ、短期的には“不安定要因”であることに変わりないというのが現実です。
■ 今回の問題から見える『チャイナリスク』とは何か?
日本は観光・水産物・製造業・インバウンド・エンタメなど、
多くの分野で中国との関係が強く、
“想像以上に依存している”という事実が浮き彫りになりました。
● 観光:インバウンド客数で最大層
→ 団体客依存の企業は特に脆弱
● 産業:部材供給は中国に集中
→ サプライチェーンの停滞が即影響
● 文化・ビジネス交流:イベント中止が相次ぐ
→ 日本企業の中国事業に継続的なリスク
中国が政治的理由で渡航・ビジネス・輸出入を制限する行動は、過去にも何度も発生しており、
今回もその延長ととらえるべきでしょう。
■ 日本が進むべきリスク分散戦略
今回のケースで最も重要なのは、まさにこれです。
① 依存先の多角化(国の分散)
- 観光なら東南アジア、中東、欧州へ販路を広げる
- 事例:富士山のバス会社がマレーシア向けツアーと契約
② サービスの多様化(事業構造の分散)
- 中国団体客に依存しない収益モデルへ転換
- 例:言語対応を強化し、欧米個人客をターゲットに
③ サプライチェーンの分散
- 日本企業は製造の一部をベトナム・インド・メキシコへシフト
- 2024年以降、国際企業で「チャイナ+1戦略」が急速に進行中
■ 個人がどう向き合うべきか──“投資面でのチャイナリスク”
中国経済の減速、政策リスク、不動産問題、政治的介入などを背景に、
中国投資は世界的に“ハイリスク資産”と認識されつつあります。
個人投資家の視点で重要なのは以下の2点です。
① 特定の国に偏らないこと
→ 「国」「セクター」「通貨」を分散することが安定の基本。
② 政治リスクの高い国には慎重に
→ 企業統制、資本規制、突然の制度変更が起こり得るため。
筆者自身、今回のニュースを通じて改めて
“依存しすぎる構造そのものが最大のリスク”
であることを再認識しました。
■ まとめ:チャイナリスクは“現実のリスク”。だからこそ冷静に備える
日中関係は今後も改善と悪化を繰り返すでしょう。
その中で私たちができることは、
- 業界として依存を減らす
- 国としてサプライチェーンを強化する
- 個人として投資を多角化する
という、現実的なリスク管理です。
外交の緊張が続く中でも、観光客は日本に魅力を感じて来日しています。
政治と民間交流は必ずしも一致しません。
だからこそ、 感情的な反応ではなく、構造的な弱点を改善する ことが、
これからの日本に求められている対応だと考えます。

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