


まずは、ざっくりと「車載レーダー」が何かを整理しましょう。
- 「レーダー」とは、ここでは短波長の電波(例:24 GHz帯、77 GHz帯)を使って、対象物に電波を照射し、その反射波で「対象物までの距離/方向/速度」を検知するセンサです。
- 「車載レーダーシステム」は、こうしたレーダーセンサ(送/受信アンテナ+レーダーチップなど)と、それを制御・判断するECU(電子制御ユニット)、さらに検知情報をもとに動作するアクチュエータや車両通信系などで構成される自動車の機能モジュールです。
- さらに、近年の自動運転支援(ADAS;先進運転支援システム)の中で、カメラ・LiDAR(光検出・測距)・超音波センサなどと組み合わせて使われ、車両の周囲状況を“複合的に”把握するために重要な役割を担っています。
このように、車載レーダーは「目や耳の代わりになって、クルマが“周りを感じる”ための仕組み」の一部、と言えます。
2. 車載レーダーが採用される背景・メリット



なぜ今、車載レーダーが注目され、拡大しているのでしょうか?その背景にはいくつかのポイントがあります。
● 雨・霧・夜間など「視界が悪い」条件でも検知しやすい
カメラや光(LiDAR)は、夜間・逆光・霧・雨・雪などで性能が劣ることがあります。一方、電波を使うレーダーは比較的こうした悪条件に耐性が強いというメリットがあります。
(もちろん“万能”ではないのですが、他センサを補う役割として有効です)
● ADAS/自動運転化の流れ
自動車の安全性能や運転支援機能(車両前方検知、自動ブレーキ、車線維持支援、死角モニタリングなど)が高度化しており、それらを実現するためには、高精度かつ信頼性のあるセンサが必要です。レーダーはその需要の中で重要な役割を果たしています。
実際、世界の車載レーダー市場も大きく成長しており、例えば2025年から2035年にかけて年率13%超の成長が予測されています。 Future Market Insights+2Precedence Research+2
● コストや搭載車種の拡大
以前は高級車や特装車に限定されていた先進的なセンサ類が、部品コスト低下、量産化の進展、法令・安全基準の強化等によりより普及しやすくなってきています。これによりエントリーモデル車でもレーダー搭載が増加しています。 Future Market Insights
3. 車載レーダーの仕組み・システム構成




車載レーダーシステムをもう少し技術的に見てみましょう。
以下のような構成要素があります。
センサ/ECU部分
- 送受信アンテナ/MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit):レーダー波を発信(送信)し、反射波を受信する部分。
- MCU(Micro Controller Unit)/DSP等:受信した信号(距離、速度、方向データなど)を処理・判断し、次の動作に繋げる制御部。
- 通信モジュール:車両CAN/Ethernet等とのデータのやり取りを行い、他の車両システム(ブレーキ、ステアリング、表示系など)とインターフェースを取ります。
- アクチュエータ/制御部:レーダーで“何か”を検知して「ブレーキをかける」「アラートを出す」「ステアリング補助を働かせる」などの動きを実現します。
検知波長・周波数帯について
- 車載レーダーでは代表的な帯域として 24 GHz帯 や 77 GHz帯(76〜77 GHz) が挙げられます。
- これらは短波長・高周波帯であるため、小さな対象物も比較的検知しやすく、速度/距離情報の分解能も出しやすいという特徴があります。
- ただし、77 GHz帯でも帯域幅(500 MHz〜1 GHz程度)が限られており、より高分解能を求めると79 GHz帯や「イメージングレーダー(4Dレーダー)」等の新技術への移行が検討されています。
車両への設置・取り付け位置
- レーダー探知性能を最適に発揮するためには、アンテナの設置位置(車両フロントバンパー、リアバンパー、サイドミラー下など)が重要です。
- 設置位置次第では車両デザイン上の制約となったり、干渉・反射(車体・タイヤ・サスペンション部など)により誤検知が起こる可能性があります。
4. メリット・デメリット・技術課題



ここでは、車載レーダーの メリット・デメリット・今後の技術課題 を整理します。
メリット
- 雨・霧・夜間・逆光など視界が悪い状況でも比較的検知性能が落ちにくい。
- 距離/速度という“動き”の情報を得やすく、他の静的センサ(カメラ)では得にくい「速度ベクトル」の判断に強みがある。
- 車線維持支援、衝突被害軽減、自動緊急ブレーキ(AEB)など、ADAS機能の実現において重要な役割を果たす。
デメリット
- 微細な物体(例えば自転車の細部、歩行者の細かい動作、色彩など)の「形状・色・テクスチャ」を識別する能力はカメラ等に劣る。
- 電波を利用するため、反射/干渉(車体部品・タイヤ・路面)・設置角度などによる誤検知・見落としの可能性がある。
- 装置・アンテナの設置位置が制約を受けやすく、車両デザインとの兼ね合いによって性能が低下する場合がある。
技術課題・今後のチャレンジ
- 分解能向上:77 GHz帯では帯域幅が限られており、歩行者と自動車を確実に分離検知するには十分ではないケースがあります。79 GHz帯の採用や、SiGeからより低コストなCMOSプロセス化などが課題となっています。
- 電波干渉・マルチパス反射対策:車体まわりの反射/車輪などの構造物による干渉が誤検知を生む可能性があるため、信号処理・アンテナ設計の最適化が求められます。
- 熱・振動対策:車載環境では高温・振動など厳しい条件が多いため、MMICやMCUの発熱や振動による信号劣化を抑える設計が必要です。
- 高帯域/高速通信:分解能が上がるほど検知データが増え、車両システムとのデータ通信速度・同期・リアルタイム性が制約となる場合があります。
- 都市部・遮蔽物下での検知:最近の研究では「非視線(NLOS:Non-Line‐of-Sight)状況」での検知をどう拡張するかが議論されています。 arXiv+1
5. 最新動向/市場の拡大(2024-25年時点)



車載レーダーに関する最近の市場・技術トレンドを紹介します。
- 市場規模:例えば、2025年時点で「世界の自動車用レーダー市場」が約 USD 6.66 億ドルから2035年に約 USD 22.94 億ドルへの成長が予測されています。 Future Market Insights
- 別のレポートでは、2025年から2032年の間にUSD 5.36 億ドルからUSD 22.83 億ドルへ成長という予測も出ています。 ヤフーファイナンス+1
- 技術面:最近では「4Dイメージングレーダー(通常の距離/速度/方向に加え、高分解能の角度・反射強度情報を持つ)」の採用が少しずつ進んでおり、単なる“物がある/ない”の検知以上の精度を目指す動きがあります。 IDTechEx+1
- さらに、国際的な安全・運転支援規格の強化、自動運転へのステップアップといった背景もあり、レーダー/センサ融合が加速しています。例えば、2025年に開かれた IAA Mobility 2025 では「スケーラブルな量産向けADAS/自動運転機能」への注目が言及されています。 Counterpoint Research
このように、単に搭載が増えるだけでなく、「より高度な機能」「より安価・小型・高精度」への移行が進んでいます。
6. 車載レーダーが活躍する具体的な機能例



車載レーダーが実際に使われているADAS機能をいくつかご紹介します。
- BSM(Blind Spot Monitoring)=死角モニタリング:車線変更時、サイドレーダーが後側方・側方の車両を検知し、ドライバーに警告します。
- LCA(Lane Change Assist)=車線変更支援:車線変更を行う際に、レーダーと他のセンサが側方・後方交通をモニタリングし、安全に変更できるかを支援。
- F/R CTA(Front/Rear Cross Traffic Alert)=前方/後方交差交通警告:駐車場からバック出庫/進入時など、横方向から近づく車両や歩行者をレーダーが検知して警告します。
- AEB(Autonomous Emergency Braking)=自動緊急ブレーキ:前方の車両/歩行者等をレーダー+カメラで検知・衝突の危険があると判断した場合、自動的にブレーキを掛ける支援を行います。 ウィキペディア+1
こうした機能が、まさに「シートベルトのように“あって当たり前”」になりつつある、と言っても過言ではありません。
7. なぜ知っておくべきか?読者のみなさまへのメリット
この記事を読んでいただくことで、以下のようなメリットがあるかと思います。
- 自動車選びの際に「どんなレーダー・センサが搭載されているか」「その機能がどれくらい信頼できるか」を判断する材料になります。
- 自動運転/ADAS技術の進化を知ることで、クルマそのものへの関心・理解が深まります。
- 安全運転・安心なカーライフを意識する上で、「レーダー+他センサ」の状況を理解しておくことは有効です。
- 転職をお考えの技術・マネジメント分野の方にとっても、自動車業界・センサ市場のトレンドを知ることはキャリア視点でも有益です(Kenjiさんのように英語+技術背景を活かす場合など)。
8. まとめ
以上、車載レーダーシステムについて、基礎から最新動向までわかりやすく整理しました。
繰り返しになりますが:
- 車載レーダーは、電波を使って周囲の「距離・方向・速度」を検知する重要なセンサで、ADAS/自動運転の根幹を支えています。
- 他のセンサ(カメラ・LiDAR・超音波など)と組み合わせることで、より高精度・高信頼な周囲状況認識が可能になります。
- 今後は「高分解能」「設置自由度」「コストダウン」「通信高速化」「都市環境/遮蔽環境対応」など、技術的なチャレンジが残されています。
- 市場的にも成長が明確であり、自動車メーカー・部品サプライヤ・半導体メーカーにとって注目分野です。
この記事を通じて、皆さまの自動車・車載技術への関心が少しでも深まれば幸いです。


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