11月、東京都内でインフルエンザの高熱にかかった小学1年生の男児がマンションから転落するという痛ましい事故がありました。
母親が薬を買いに出かけている間の出来事で、高熱による「意識の混乱」や「異常行動」が原因とみられています。
今回の事故を受け、厚生労働省は改めて インフルエンザ時の異常行動 に関する注意喚起を行っています。
この記事では、
- 高熱がなぜ子どもに“異常行動”を引き起こすのか
- それは薬の副作用なのか?
- 親が取るべき安全対策
- 現代だからこそ使える“頼る手段”
をまとめ、最新の知見も交えて解説します。
1. インフルエンザと「異常行動」―何が起きている?
厚生労働省が注意喚起する異常行動には、以下のような例があります。
- 突然立ち上がって部屋から出ようとする
- 興奮して窓を開けてベランダに出る
- 外へ走り出す
- 意味不明な言動をする
- 泣きながら部屋中を歩き回る
- 笑い出す・叫ぶ・幻覚・幻聴を訴える
こうした行動は インフルエンザ脳症・高熱・意識障害 など複数の要因が絡むとされています。
2. なぜ高熱で意識が混乱するのか?(医学的背景)
結論から言うと、原因は1つではありません。
最新の医学的知見では以下の3点が主因とされています。
① 高熱による中枢神経の“機能不安定化”
子どもの脳はまだ発達途中で、大人より体温変化の影響を受けやすいと言われています。
- 体温が39〜40℃に急上昇
- 自律神経が混乱
- 覚醒レベル(意識の深さ)が乱れる
- 幻覚・錯乱などが出やすくなる
特に 発熱のピーク時(発熱から24時間以内) に起こりやすいことが知られています。
② インフルエンザウイルスによる炎症反応
インフルエンザが体内に入ると、免疫反応が強く働き、炎症性サイトカインが一気に放出されます。
この「サイトカインストーム」は脳の機能にも影響し、
- ぼーっとする
- 覚醒が不安定になる
- 言動に一時的な混乱が起きる
といった症状を引き起こす可能性があります。
③ インフルエンザ脳症の初期症状の可能性
稀ではあるものの、インフルエンザ脳症の初期に異常行動が出ることがあります。
- 意識障害
- 意味不明な言動
- けいれん
などが特徴です。
医療機関は、この可能性を排除するためにも、異常行動を軽視しないよう呼びかけています。
3. 「薬の副作用」なのか?(タミフルなど)
■ 結論:
異常行動は薬の副作用ではなく、インフルエンザそのものによる可能性が高い とされています。
厚生労働省は以下のように発表しています:
- 異常行動は、抗インフルエンザ薬(タミフル・リレンザ等)を 使用していない子どもにも発生
- そのため薬が原因とは言えない
- むしろインフルエンザ自体による脳機能の一時的な乱れと考えるのが妥当
つまり、
「高熱」+「インフルエンザの炎症反応」 が主体です。
4. 親はどう対策すべき?(安全確保が最優先)
厚生労働省が推奨する対策をまとめると以下の通り。
■ 【転落や外出を防ぐための対策】
- 窓・ベランダの鍵を必ず施錠
- ベランダに面していない部屋で寝かせる
- 玄関のチェーンをかける
- 上下階の階段・吹き抜け構造に注意
■ 【親が外出しなければならない時】
本来は外出を避けるべきですが、どうしてもという場合は:
- 近くの家族や知人に見守りを依頼
- 急な外出なら、子どもを安全な部屋(鍵のある部屋)に寝かせて短時間で戻る
- 薬は“調剤薬局での配送”を利用する
5. いざという時に使える支援サービス
コロナ禍以降、家庭を支えるサービスが増えています。
■ ① 調剤薬局の「お薬配送」サービス
- 医師が処方箋データを薬局へ送信
- 待ち時間ゼロで受け取り
- 一部薬局では自宅まで配達可
■ ② 病児保育室
- 病気の子ども専用の保育施設
- 保育士+看護師が常駐
- 同じ感染症の子ども同士で対応してくれるため安心
■ ③ 近隣の“傘地蔵方式”の助け合い
玄関前に食料や飲み物を置いてもらうだけでも大きな助けになります。
■ ④ デリバリー・買い物代行
- Uber Eats / 出前館
- Amazon当日配送
- 食材宅配
費用に余裕があれば「病児シッター」という選択肢も。
6. まとめ ― 高熱時の異常行動は“子どもの脳のSOS”
高熱による異常行動は、
薬の副作用ではなく、発熱とウイルスによる一時的な脳機能の混乱 が主な原因。
インフルエンザの子どもは、とにかく「安全確保」が最優先です。
- 鍵をかける
- ベランダのない部屋で看病
- 外出は最小限
- 支援サービスを活用
- 一人で抱え込まない
感染症のときこそ、地域の助け合いが重要になります。
子どもの異常行動は決して珍しいものではありません。
しかし、適切に備えることで多くの事故は防ぐことができます。

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