~4Dレーダー・79GHz帯・センシング融合が切り拓く新時代~
近年、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)の進化により、「車載レーダー」は従来の“障害物検知センサー”から、“環境認識の中核”へと役割を変えつつあります。
今回の記事では、次世代技術として注目される「4Dレーダー」や「79GHz帯」、そして「マルチモーダルセンシング(レーダー+カメラ+LiDAR融合)」の最新動向についてご紹介します。
■ 4Dレーダーとは? ― 時間+空間の“4次元検知”へ
従来のミリ波レーダーは「距離」「速度」「方位」の3次元情報を取得できました。
しかし、近年登場した4Dレーダーは、これに「高度(高さ)」情報を加え、4次元的な環境認識を実現しています。
これにより、以下のような新しい検知が可能になります。
- 駐車場など立体的な空間で、歩行者・車両・構造物を正確に区別
- 雨・霧・夜間など視界不良時にも安定した検知性能
- LiDARやカメラが苦手とする悪天候下での“バックアップセンサー”として機能
現在、Aptiv・Continental・Arbe Robotics・NXPなどが4Dレーダー技術を実用化段階に進めており、2026~2028年に量産車搭載が本格化すると見られています。
■ 79GHz帯レーダーへ ― 高解像度化と低干渉化の流れ
従来、車載ミリ波レーダーは76~77GHz帯が主流でした。
しかし今後は、79GHz帯へと移行が加速しています。
<79GHz帯のメリット>
- 帯域幅が広く、より細かな距離分解能を実現
- レーダー同士の干渉を低減し、複数車両が近接しても安定動作
- アンテナ小型化による車載設計の自由度向上
EUではすでに79GHz帯がADAS用として標準化されており、日本でも各メーカーが統一周波数化と高解像度対応を進めています。
特に、自動駐車支援や交差点検知など、より精密な制御が求められる用途で活躍が期待されています。
■ レーダー×カメラ×LiDAR ― センサーフュージョンの時代へ
完全自動運転の実現には、単一のセンサーでは限界があります。
そこで登場するのが、**センサーフュージョン(Sensor Fusion)**です。
レーダーは「距離・速度」に強く、カメラは「認識・識別」に優れ、LiDARは「高精度3Dマッピング」が得意です。
この3者を統合することで、以下のような次世代機能が可能になります。
- 見通しの悪い交差点での“不可視領域検知”
- 歩行者・自転車・車両の種類をAIで自動識別
- 自動緊急回避・自動駐車・渋滞時自動運転などの高度化
特に最近では、AIが各センサーの信頼度をリアルタイムで評価し、最適な判断を下す「自己学習型Fusion制御」も研究が進んでいます。
■ 今後の展望 ― “ソフトウェア定義センサー”の時代へ
将来の車載レーダーは、ハードウェア性能だけでなく、ソフトウェアによる後付けアップデートが重要になります。
OTA(Over The Air)でレーダー信号処理アルゴリズムを更新し、
新しい検知機能を“ソフトで追加”できる時代が近づいています。
つまり、
「レーダー=ハードウェア」から
「レーダー=進化するプラットフォーム」へ
この変化は、車載ソフトウェアアーキテクチャ(SDV: Software Defined Vehicle)とも密接に関連しており、次世代モビリティ産業の競争軸となるでしょう。
■ まとめ ― 車載レーダーは「見えない目」から「賢い脳」へ
かつてレーダーは単なる「距離測定装置」でした。
しかし今や、AI・高周波技術・センシング融合の進化によって、自動車の“知覚能力”を担う中核技術へと成長しています。
下記に補足として「センサーフュージョンと自動運転レベル」についても解説します。
■ センサーフュージョンが支える自動運転レベル3~4 ― 実車事例から見る進化
自動運転の発展段階を示すSAEレベル3~4では、車両が一定条件下で運転操作を完全に担うことが求められます。
この実現の鍵となるのが「センサーフュージョン(Sensor Fusion)」です。
レーダー・カメラ・LiDARなど複数のセンサー情報を統合し、車両が“自分で周囲を理解し、判断する”能力を強化します。
◾ 実際の車両事例
① Mercedes-Benz S-Class / EQS(レベル3対応:Drive Pilot)
メルセデスは2023年に世界初の**レベル3認可(ドイツ・米国)を取得。
高精度LiDARと複数の77GHzレーダー、ステレオカメラ、超音波センサーを融合し、
高速道路での条件付き自動運転(60km/h以下)**を実現しました。
各センサーの信頼度をAIがリアルタイムで評価し、冗長性を確保しています。
② Honda Legend(日本初レベル3認可車)
ホンダは2021年、世界で初めて国の認可を得たレベル3自動運転車「Legend」を発売。
フロントのミリ波レーダーとカメラに加え、LiDAR・GPS・高精度地図データを統合。
渋滞時にはドライバーが操作を手放せる「トラフィックジャムパイロット」を実装しています。
③ Tesla・Waymo・NVIDIA DRIVEのアプローチ
- Teslaはカメラ中心の「Vision Fusion」へ転換。AI学習により擬似レーダー情報を生成。
- **Waymo(Google系)**は、LiDAR+レーダー+カメラの三位一体による「360度Fusion」で都市部自動運転を実現。
- NVIDIA DRIVEは、Fusionデータを統合して自動運転AIを強化するエッジAIプラットフォームを提供。
いずれも、センサーフュージョンが車の「脳」として判断精度を高めている点で共通しています。
◾ 今後の展望
レベル3からレベル4へ進化するには、
- ① センサー情報の融合精度向上
- ② AIによる環境認識の自己学習
- ③ 走行中のOTAアップデート(ソフトウェア定義)
が不可欠となります。
特に79GHz 4Dレーダー+AI統合制御は、次世代ADASの“主軸技術”として各社が開発を加速中です。
今後、センサーフュージョンは「安全支援」から「自律運転の根幹」へと進化していくでしょう。

コメント