〜80年目の夏、私たちが向き合うべきもの〜
2025年11月、ある映画が全国で順次公開されます。タイトルは『はだしのゲンはまだ怒っている』。不朽の反戦漫画『はだしのゲン』の誕生から現在までを描いたドキュメンタリー作品です。
この映画を通じて、私は久しぶりに「はだしのゲン」に向き合ってみようと思いました。
「はだしのゲン」とはどんな作品か?
『はだしのゲン』は、1973年に「週刊少年ジャンプ」で連載が始まった漫画作品です。主人公のゲンは、広島に原子爆弾が投下される中で被爆し、家族を失いながらも、戦後の貧困と偏見を生き抜いていく少年です。
その姿は、作者・中沢啓治さん自身の体験が色濃く反映されたもので、物語は時に過酷で、時に怒りと悲しみを伴いながらも、読者に「戦争とは何か」「生きるとは何か」を問いかけてきました。
現在までに25か国で翻訳出版されており、世界中で読み継がれている名作です。
表現の自由と教育現場の揺れ
近年、『はだしのゲン』は日本国内で議論の対象にもなっています。
「描写が過激すぎる」「子どもに読ませるには刺激が強い」「歴史認識に偏りがある」といった声が一部であがり、学校図書館での閲覧制限がかけられたり、平和教育の教材から外されたりという動きも出ています。
しかし、本当にそれでいいのでしょうか?
過激な描写に感じるのは、むしろ戦争や原爆の現実がそれだけ残酷であることを示しているからです。フィクションでありながら、現実に即した痛みが込められているからこそ、読者の心に残り、考えるきっかけとなるのです。
映画『はだしのゲンはまだ怒っている』が描くもの
この映画は、2024年にBS12で放送されたドキュメンタリー番組「『はだしのゲン』の熱伝導~原爆漫画を伝える人々~」を映画化した作品です。
監督は込山正徳氏。彼にとっては初の映画監督作品となります。さらに、『香川1区』『国葬の日』で知られる大島新氏と、『NO選挙,NO LIFE』の前田亜紀氏が共同プロデューサーとして名を連ね、戦後80年を迎えるこのタイミングで、「ゲン」が今に問いかける意味を改めて映し出そうとしています。
映画は11月より、東京・ポレポレ東中野、広島・サロンシネマほか全国で順次公開予定です。
あの頃、私は「怖くて読めなかった」
私自身、子どものころに『はだしのゲン』に出会った記憶があります。学校の図書館に全巻そろっていたものの、目を背けたくなるような描写が多く、正直、最後まで読むことができませんでした。
それでも、何か心に引っかかるものが残っていました。それが今、「読まなければならない本」だと強く感じています。
80年という年月が流れ、戦争を知る人が少なくなった今だからこそ、私たちは「直視すること」をやめてはいけないのだと思います。
まとめ:私たちは何を次の世代に伝えるべきか
『はだしのゲン』は、決して「昔の漫画」ではありません。今の社会、そして未来の日本にとって必要な「問い」を投げかけ続けている存在です。
表現が過激だと感じるからこそ、その背景にある現実を知るべきです。議論があるからこそ、私たちは考えるべきです。
ドキュメンタリー映画『はだしのゲンはまだ怒っている』が描くのは、ただの過去ではありません。「いま」と「これから」に向けてのメッセージなのです。
この機会に、ぜひ一度『はだしのゲン』を読んでみてはいかがでしょうか?
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