近年ニュースでも頻繁に耳にする「トクリュウ(匿流)」。
これは警察庁が定義した「匿名・流動型犯罪グループ」の略称で、SNSを通じて闇バイトの募集を行い、特殊詐欺や強盗などの犯罪を組織的に行う新しいタイプの反社会的集団です。
従来の暴力団や半グレと違い、厳格な上下関係や統制がないのが特徴で、インターネットを駆使しながら実行役をその都度集め、犯行に及ぶ流動的な仕組みを持っています。
トクリュウの特徴
- 匿名性の高さ:SNSや暗号化メッセージアプリを利用し、指示役の身元を隠す。
- 流動的なつながり:固定メンバーではなく、必要に応じて募集と解散を繰り返す。
- 役割の分担:リクルーター、指示役、実行役に分かれ、逮捕されてもすぐに新たな実行犯が補充される。
- 「使い捨て」構造:末端の若者や応募者は使い捨てにされ、報酬が支払われないことも多い。
主な事件例
- ルフィ広域強盗事件(2022-2023)
海外拠点からSNSを通じて指示を出し、日本国内で一連の強盗事件を引き起こした。 - 海田町事件(2022)
強盗致死や監禁が行われた凶悪事件で、匿名アカウント群による脅迫や虚偽情報の拡散が確認された。 - 首都圏連続強盗事件(2024)
関東地方で相次いだ強盗事件。闇バイトが実行役として動員された。 - 2025年の抗争事件
名古屋と大阪のグループ間で抗争が発覚し、警察が検挙。匿名性と流動性が裏社会の新たな火種となっている。
警察の対応
警察は全国的に捜査体制を強化しています。
- 特殊詐欺連合捜査班の設置(2024年4月)
- 警察庁に情報分析室を新設(2025年10月)
- 各都道府県警察で専門部署の発足(北海道・岩手・石川・滋賀・福岡・長崎など)
また、闇バイト応募者の保護にも力を入れており、2024年末までに全国で125件の保護事例が報告されています。応募者の多くは10〜20代の若者ですが、50代以上のケースも存在しています。
なぜ若者が巻き込まれるのか
「高額バイト」「即日支払い」「学生可能」といった甘い誘い文句で募集される闇バイト。
アルバイト感覚で応募してしまった若者が、個人情報を握られて脅され、報酬もないまま犯罪を繰り返させられるケースが目立ちます。
一度関わると抜け出すことが難しく、最悪の場合は自分が逮捕されるリスクを背負うことになります。
自分を守るためにできること
- SNS上で「高額バイト」など怪しい募集には近づかない
- 仕事内容が不明確な求人には応募しない
- もし関わってしまったら、一人で抱え込まず家族や警察に相談する
犯罪グループは巧妙に近づいてきますが、正しい知識を持つことで被害に遭うリスクを減らすことができます。
まとめ
「トクリュウ」は、SNSの発達により生まれた新しい形の犯罪集団です。
匿名性と流動性を武器にして、若者を中心に多くの人を巻き込み、社会に深刻な影響を与えています。
高額報酬に惹かれて安易に応募してしまうと、取り返しのつかない結果を招くこともあります。
「怪しいと思ったら応募しない」「相談する」――この基本を守ることが、犯罪から自分を守る第一歩となります。
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