はじめに
近年、SNSや動画プラットフォームで「有名人が絶賛する投資法」などの広告を目にしたことはありませんか?
しかし、その多くは なりすまし広告(フェイク広告) と呼ばれる詐欺の一種であり、消費者から多額の金銭をだまし取る危険な手口です。
警察庁の発表によると、2023年に認知されたSNS型投資詐欺の件数は 2,271件、被害額は 約277.9億円 に上り、国民生活センターへの相談件数も前年度比で約10倍に急増しています。
これはもはや一部の問題ではなく、社会全体で警戒すべき深刻な事態といえるでしょう。
なりすまし広告とは?
なりすまし広告とは、
- 有名人の名前や写真を無断で利用
- 「限定のもうけ話」「無料セミナー」などの虚偽情報を掲載
- 投資や仮想通貨などを名目に金銭を詐取
といった流れで消費者をだます手口です。
特に 生成AI技術の進化 により、本人そっくりの映像や音声を使った「フェイク広告動画」も登場しており、見抜くことがますます困難になっています。
代表的な手口の事例
1. 有名人の写真を利用した投資勧誘型詐欺
「○○氏が投資法を公開!」「無料セミナー開催」などと広告に表示し、LINEグループに誘導する手口。
最終的に株式や仮想通貨の名目で金銭をだまし取ります。
2. 偽のメッセージアカウント
有名人になりすましたLINEやSNSアカウントから「直接やりとり」を装い、投資グループやセミナーに勧誘するケース。生成AIで作られた音声メッセージも利用され始めています。
3. 偽ニュース記事型広告
日本経済新聞や経済誌を装ったページを作成し、「テスラが仮想通貨事業を開始」などの虚偽記事に誘導する手法。実在の企業や著名人を組み合わせ、信頼性を演出します。
4. フェイク動画広告
ニュース番組風に編集された映像で、有名人やCEOが存在しない発言をしているように加工。視聴者に「本物らしさ」を信じ込ませる危険な形式です。
法的視点から見る「なりすまし広告」
なりすまし広告は以下の法的問題を含みます。
- パブリシティ権の侵害:有名人の肖像や名前を無断で広告利用する行為
- 肖像権の侵害:本人の承諾なく容姿を使用・加工する行為
- 名誉毀損罪:虚偽広告により本人の社会的評価を損なう行為
- 著作権侵害:写真や映像を無断利用・改変する行為
実際に、女優やタレントの無断画像使用に対し、損害賠償が認められた裁判例も存在します。
プラットフォーム事業者の責任
2024年5月には、実業家の前澤友作氏が Meta社(Facebook/Instagram運営)を提訴 しました。
理由は、自身や他の著名人の肖像を悪用した詐欺広告が放置され、被害が拡大しているためです。
Meta社側も対策強化を発表していますが、広告量の膨大さや検出回避の巧妙化により「完全な防止は困難」とされており、法整備や社会全体での対応が求められています。
消費者ができる対策
なりすまし広告を避けるには、以下の点に注意してください。
- 「有名人が投資をすすめている広告」は基本的に疑う
- SNS広告をクリックせず、公式サイトから情報を確認する
- 不審なアカウントやLINEグループには参加しない
- 金銭取引を持ちかけられたら即ブロック
- 被害に遭った場合は、警察・国民生活センターに相談
まとめ
なりすまし広告動画は、生成AIの進化とSNS広告の普及によって急速に拡大している社会問題です。
これは単なる「広告トラブル」ではなく、
- 消費者から金銭を奪う詐欺
- 有名人の権利を侵害する違法行為
- プラットフォーム事業者の責任が問われる課題
といった複合的な問題を抱えています。
被害を防ぐには、利用者一人ひとりの警戒心が不可欠です。
「本当にその有名人が言っているのか?」を常に疑い、正しい情報源を確認する習慣を持ちましょう。


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