― なぜアメリカ人は「くら寿司」に10時間も並ぶのか ―
はじめに:アメリカで大行列を生む「くら寿司」現象
最近、日本発の回転ずしチェーン「くら寿司(Kura Sushi)」がアメリカで驚くほどの人気を集めています。
カリフォルニア州の店舗では8時間から10時間待ちも当たり前。中には朝5時からテントを張って開店を待つファンまでいるというのです。
日本では“家族で気軽に行ける回転ずしチェーン”というイメージのくら寿司が、なぜここまでアメリカで成功しているのでしょうか。
そこには、「ビジネスニーズの違い」を理解し、的確に対応した戦略がありました。
くら寿司の進化:食とエンタメの融合
くら寿司は、ただの回転ずし店ではありません。
1987年に「E型レーン」を導入し、家族でも座りやすい設計を実現。
2000年には、皿を5枚入れると抽選ゲームが始まる「ビッくらポン!」を導入し、“食べる”だけでなく“遊べる”場所へと進化しました。
このように、「食 × エンターテインメント」という体験を提供することで、ファミリー層から圧倒的な支持を得てきました。
米国進出:8割グローバル+2割ローカルの成功法則
くら寿司USAを率いる姥一(うば・はじめ)CEOは、アメリカ進出にあたって「8割のグローバルスタンダードと2割のローカライズ」というルールを掲げました。
- グローバルスタンダード(8割):
タッチパネル注文や回転レーン、「ビッくらポン!」など、日本の体験型仕組みをそのまま導入。 - ローカライズ(2割):
現地の嗜好に合わせたメニューやサービスを追加。
例えば、アメリカで人気の寿司ネタは「炙りサーモンマヨネーズ」や「クランチロール」など、見た目や味にインパクトのあるもの。
また、セルフサービスに慣れていない文化を考慮し、飲み物はスタッフやロボットが運ぶ方式を採用しました。
この「8:2のバランス」が、現地文化へのリスペクトと日本流の体験価値を両立させ、成功につながったのです。
「食×エンタメ」がアメリカで受けた理由
アメリカでは、外食は「食べるだけ」の場として位置づけられることが多く、「体験型の飲食」は珍しい存在です。
そのため、くら寿司の「食べながら楽しめる」仕掛けが新鮮に映りました。
さらに、SNSの普及によって、「ビッくらポン!」で当たった瞬間を動画に撮ってシェアするなど、エンタメ性がSNS映えする体験として拡散。
まさに「話題が話題を呼ぶ」好循環を生み出したのです。
ソフトパワーとしての「食文化」
ハーバード大学のジョセフ・ナイ氏が提唱した「ソフトパワー」という概念。
それは、軍事力や経済力ではなく文化や価値観を通じて他国に影響を与える力を指します。
くら寿司がアニメ「鬼滅の刃」や「ワンピース」とコラボした「ビッくらポン!」を展開しているのも、その一環。
食を通して、日本のアニメや文化に触れる機会をつくり、日本のカルチャーを“体験として輸出”しているのです。
日本とアメリカの「当たり前」は違う
この事例が示すのは、「日本では日常のことが、海外では非日常になり得る」という事実です。
たとえば:
- 日本では当たり前のセルフサービスが、アメリカでは抵抗感を持たれる。
- 日本人にとって“子ども向け”の「ビッくらポン!」が、アメリカ人には大人も楽しめるエンタメとして新鮮に感じられる。
つまり、ビジネスにおいて重要なのは、相手の文化や価値観に合わせて“意味づけ”を変えることです。
まとめ:ビジネスチャンスは「違い」の中にある
くら寿司の成功は、単なる寿司チェーンの話ではありません。
それは、「自国では当たり前のことを、他国の視点で見直す」という発想の大切さを教えてくれます。
ビジネスニーズの違いを理解し、文化に寄り添った形で価値を再構築できれば、どんな業界にもチャンスがあります。
普段の生活に「当たり前」として見過ごしている中にこそ、新しいビジネスの種が隠れているのかもしれません。
💡筆者のひとこと
日本では普通のことが、海外では特別に映る。
「当たり前」を疑い、「違い」を観察すること。
それが新しい価値を生む第一歩だと、くら寿司の成功事例が教えてくれます。

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