「先生の声は聞こえるのに、内容が頭に入ってこない…」
そんな不思議な“聞こえ方の異変”を抱える若者が増えていることをご存じでしょうか?
近年注目されているのが 「聞き取り困難症(LID:Listening Difficulties)」 です。
一般的な聴力検査では異常がないにもかかわらず、特定の声や状況下で言葉が理解しにくくなる症状を指します。
2024~2025年にかけて日本でも認知が広まり、学校や職場での配慮の必要性が注目されています。
■ 「聞こえるのに聞き取れない」女子高生のケース
ある女子高生は、高校入学後に“聞こえ方の異変”に気づきました。
家族や友人の声は理解できるのに、なぜか物理の先生の声だけが聞き取れないという状況に。
- 声は確かに耳に入る
- でも言葉として処理できない
- 授業内容が頭に残らない
その結果、得意科目だったのにテストで大幅に点数が下がってしまい、強い不安を感じたといいます。
実は、この現象は珍しいことではなく、人口の約1%に見られる可能性があると言われています。
■ LID(聞き取り困難症)とは?特徴と症状
LID(Listening Difficulties)=聞き取り困難症 とは、周囲の音は聞こえているのに、言葉として脳が処理できない状態を指します。
以前は APD(聴覚情報処理障害) と呼ばれていましたが、近年は国際的にLIDという表現が主流になってきています。
▼ LIDの主な特徴
| 症状 | 説明 |
|---|---|
| 特定の声だけ聞き取れない | 特定の先生・上司など、声質によって理解しにくい |
| 複数人の会話が聞き取りにくい | 会話が混ざり、誰が話しているか分かりにくくなる |
| 騒がしい場所で理解が難しい | カフェ・教室・会議など雑音環境が苦手 |
| 会話の一部が欠けて聞こえる | “虫食いのように”言葉が抜けて理解できない |
聴力には問題がないため、周囲から理解されにくいことが大きな課題です。
■ なぜ起こるの?原因と最新研究
LIDは耳ではなく脳の言語処理に関係していると考えられています。
しかし、2025年時点でも医学的にはまだ研究段階で、明確な原因は解明されていません。
考えられている要因の一例:
- 脳で音声を言語として処理する際の負荷
- 生まれつきの聴覚情報処理の特性
- 注意機能やワーキングメモリとの関連
※進行性ではないと言われているため、適切なサポートと環境づくりが重要です。
■ 学校・職場でできる対処法(すぐ使える実践例)
LIDに対して即できるサポートとして、次の方法が効果的です。
● 便利ツールで補う方法
| 方法 | 効果 |
|---|---|
| ノイズキャンセリングイヤホン | 周囲の雑音を抑えて聞き取りやすく |
| 文字起こしアプリ | 話の内容を文字で確認 |
| 音声録音+後で確認 | 情報の取り逃し防止 |
● 周囲ができるサポート
- ゆっくり、はっきり話す
- 視線を合わせ、口の動きが見える位置で話す
- 板書や資料を活用し、視覚情報で補う
いずれも「特別扱い」ではなく、学習・仕事のスタートラインをそろえるためのサポートです。
■ LIDは「隣にいる誰か」の問題かもしれない
2025年の調査では、LIDを自覚する人の約 2割が学校や職場で理解されず困難を経験 と回答しています。
特に「外見では分からない」ため、誤解されやすいのが現状です。
私たちができる大切な一歩は、
「拒否」ではなく「理解しようとする姿勢」を持つこと。
もし周囲に困っている人がいたら、
「どう聞こえている?」「何があれば聞こえやすい?」と、まず対話してみることが大きな支えになります。
■ 筆者の体験:私も学生時代に似た経験がありました
実は筆者自身も学生時代、特定の先生(数学や物理)の授業だけ、なぜか内容が頭に入らず、眠気に襲われる経験がありました。
当時は「相性の問題かな?」と思っていましたが、今回のニュースを知り、もしかしたらLIDの特性があったのでは… と感じています。
同じような経験がある方は、決して自分だけのせいだと思わないでくださいね。
■ まとめ:LIDを知ることが理解への第一歩
- 聞こえているのに聞き取れない人は、100人に1人いる可能性
- LIDは耳の問題ではなく、脳の処理特性によるもの
- 進行性ではなく、環境づくりで改善が期待できる
- 学校や職場での「合理的配慮」が重要
LIDはまだ認知度が低く、理解されにくい症状ですが、知っている人が増えれば救われる人も確実に増えます。
あなたの身近にも、困っている人がいるかもしれません。
この記事が、少しでも“気づき”と“優しさ”のきっかけになれば嬉しく思います。

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