1. 現状:日本の「四季」が崩れつつある
かつて「春・夏・秋・冬」と四つに分けられていた日本の季節感ですが、最近では「夏が長く、春と秋が短く、冬があるにはあるが存在感が薄い」という変化が指摘されています。
- 国際農研の報告によれば、1952~2011年の間に日本(および北半球)で「夏」が78日から95日へと延びた一方、「春」と「秋」がそれぞれ124日→115日、87日→82日へと短縮されていることが示されています。
- また、三重大学の研究(立花義裕教授ら)では、1982~2023年の42年間に日本全国規模で「夏の開始日」が約12.6日早まり、「夏の終了日」が約8.8日遅くなっており、合計でおよそ21日程度「夏」が延びたとされています。
- さらに、2024年~2025年の報道では、「長い夏と短い/弱い春・秋」という変化により、「四季から『二季(夏+冬)』化する可能性」が語られています。
このように、データ&報道ともに、伝統的な日本の「四季」が変わりつつあるという傾向が裏付けられています。
2. 原因:なぜ「二季化」が進むのか
この季節変化の背景には様々な要因がありますが、主なものを整理します。
・温暖化(地球規模・日本周辺)
地球全体で気温が上昇しており、日本も例外ではありません。特に日本周辺海域の海面水温の上昇、熱帯からの暖流(例えば黒潮)の影響などが、夏の長期化・強化に関与していると指摘されています。
・気候システムの構造変化
例えば、偏西風の蛇行、海流の変動、海陸温度差の変化などが複雑に絡んで、従来の「春/夏/秋/冬」というサイクルから、季節の移り変わりがスムーズでなくなってきています。
・季節の“境界”の弱体化
「春らしさ」「秋らしさ」を感じる期間が短くなっており、衣替え、紅葉、花見といった季節行事/体感が薄れてきているとする指摘があります。例えば立花教授は「紅葉の時期がずれて、季節を味わう期間が縮まる」と述べています。
3. 影響:私たちの生活・文化・自然に何が起きるか
この「四季 → 二季化」の流れは、単なる気温変動だけではなく、社会・文化・自然に多方面の影響を及ぼします。
・生活・健康面
- 長く暑い夏は「熱中症」「猛暑日」「夜の熱帯夜」などのリスクを高めます。
- 季節の移り変わりが急になると、気温や湿度の変動に体が追いつきにくく、体調を崩す人も増えそうです。
- 行事やイベントのタイミングが変わる可能性も:例えば春の運動会などが「9月→11月にずれる」との予測もあります。
・農業・食文化
- 作物の生育周期、収穫時期、植え付け時期などが変化し、春・秋の「穏やかな季節」が短くなることで、栽培計画にも影響が出る可能性があります。国際農研もこうした影響を指摘しています。
- 春の山菜や秋の収穫祭、紅葉観賞など、「四季を楽しむ」文化的行為が減少あるいは変化の方向にあるといえます。
・自然・生態系
- 植物・動物の活動周期(花の咲く時期、渡り鳥の到来/出発時期など)が変わる可能性があり、生物多様性や生態系のバランスに影響が出ることが懸念されています。
- 春/秋の短縮によって「ちょっと涼しい/過ごしやすい季節」が短くなれば、自然の風情を感じる機会も減っていきそうです。
4. 補足:2025年時点での最新知見・注目ポイント
- 2024年~2025年にかけて、日本では「観測史上最高気温」が春・夏・秋に連続して更新されており、異常気象が“新たな常態”になりつつあるとの報道があります。
- データ分析(2003〜2022年)では、「春」が日本国内で最も温暖化が進行している季節という結論も出ています。
- 社会・文化的には、「日本の四季を守る/四季を感じる」という価値観自体が変化を迫られているという論考も出ており、気候変動の影響が単なる「天気」の話を超えて、文明的・文化的な文脈でも語られています。
5. 筆者とあなた(読者)への問いかけ
あなたは、子どもの頃に「春の桜」「秋の紅葉」「冬の雪」「夏の海・祭り」といった四季の移り変わりをどう感じていたでしょうか?
今、自宅や近所・旅行先で「この季節らしさ」を感じる機会は、以前と比べて減っていると感じませんか?
筆者は、「四季がバランスよく配分されていて、季節に応じた食材、イベント、それらに伴った感情があり心地よかった」と感じています。ですが、この数年で事情が変わってきました。特に、「長い夏」は強烈で、「春」「秋」の“余韻”が少ないなと感じるようになりました。
FIREを目指して「暑い夏と寒い冬に海外移住も…」と考えていたのですが、もしかすると「日本にいて過ごせるちょうどいい季節(日和)がどんどん短くなっていく」可能性を考える必要があるのかもしれません。😢
6. 解決/対策:私たちにできること
「気候変動だから仕方ない」と諦める前に、個人・地域・国家レベルでできる取り組みもあります。
個人レベル
- エアコンの設定温度を少し上げたり、扇風機と併用するなど、電力消費・CO₂排出を抑える工夫。
- 自動車の使用を控え、公共交通・自転車・徒歩を増やす。
- 食材を地元で調達する「地産地消」や、食品ロスの削減を意識する。
- 緑を育てる、ベランダ菜園・屋上緑化など、身近な“緑”を増やす。
社会・地域レベル
- 再生可能エネルギーの導入を地域で推進。
- 都市部では「ヒートアイランド対策(屋上緑化・街路樹・遮熱舗装)」を進める。
- 農業では“早生/晩生”品種への切り替えや、気候変動に強い栽培方式を取り入れる。
意識レベル
- 季節を味わう意識を持つ:例えば「春に散歩」「秋に紅葉」「冬に雪景色・こたつ時間」「夏に海・山・祭り」など、四季を感じる暮らしを意図的に作る。
- 気候変動の影響を「他人事」ではなく自分事として捉える。日本の四季が変わることは、文化・暮らしそのものの変化を意味しています。
7. まとめ
日本の気候は、「春・夏・秋・冬」の四季循環から、「長い夏/しっかりあるけど縮まる冬/ほとんど短くなる春・秋」という“二季化”へと移りつつあります。これは単なる季節の問題ではなく、農業・暮らし・文化・自然に関わる大きな変化です。
とりわけ、私たちが「心地よさ」「季節感」「暮らしのゆとり」として享受してきた“春・秋”の穏やかな時間が縮むというのは、実感としても少し寂しさが伴うものです。
だからこそ、今こそ「四季を守る/四季を感じる」ための暮らし方を意識しつつ、自分たちの暮らしと地球環境をつなぐ視点を持つことが大切だと思います。

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