今回は「いつ自動運転？」についてお話ししたいと思います。
現在自動車業界ではCASE (Connected Automated/Autonomous Shared Electric)関連の開発が進んでいます。巷では2025年には自動運転車が登場？とか聞きますが、実際にはいつ自動運転が実用化されるのでしょうか。
この記事を読むことで、自動車業界の動向を学ぶ際や自動車購入の参考になれば幸いです。
まず、自動運転の定義については、現在SAE基準/自動運転レベルの定義 (6段階)が日本を含む世界においての主流となっています。
現在、市販されている自動車での自動運転レベル”レベル0″から”レベル3″ですが、一般の方々の購入対象となる価格帯の車のレベルは”レベル0″から”レベル2″でしょう。
ということで、”レベル2″から”レベル3″へ移行するための課題/ハードルを下記に挙げます。
①コスト
先行運転支援システム、通称ADAS(Advanced Driver Assist System)を実現するためには、自車を取り巻く環境をモニターするための各種センサー類を必要とします。代表的なものでは、赤外線、ソナー、レーダー、カメラ、LIDARなどです。各種、性能に応じたコストがかかるため、各自動車メーカーでは最適な組み合わせを模索している状況です。一般に性能の良いものは高価です。
②センサー類の性能
センサー類の性能も千差万別です。赤外線、ソナーは近距離検知向け。レーダーは電波強度によるが中長距離検知向け、またアンテナデザインによって検知角度が変わる。カメラは外光、夜間、悪天候により悪影響を受けやすい。LIDARは高性能だが、高価でシステムが大きい。と、各自動車メーカーは最適な組み合わせを模索している状況です。
③センサー情報の活用
実はこれが自動運転化で一番重要なものと著者は考えています。各種センサー類で得る情報は自動運転システムへの入力情報であり、下記図で表現している自動運転プロセス/遷移の「情報収集」部分です。この入力情報を用いて「分析・認識」、具体的には自車の周囲にある物体；他車、バイク、自転車、歩行者、建物などの構造物のどれに該当するかを分析し認識します。その情報を持って自車の「行動決定」、具体的には「追従」、「追い越し」、「車線変更」、「右左折」などの行動を決定し、「機構制御」、具体的には「加・減速」、「ステアリング操作」などの操作を行うというサイクルになっています。各自動車メーカーは主に「情報収集」について最適な情報は何か、「分析・認識」について、正確な分析・認識を行うにはどうしたらよいのかについて模索している状況です。
④位置情報
現在、活用できる自車の位置情報はGPSの位置情報とNAVIの地図情報です。GPSの誤差は10～20メートル(12分30秒ごとに更新)と言われ、NAVIで表される位置情報は自車の走行速度と距離情報で補正されています。トンネル内なども、NAVIで自車の位置が表されているのはこれが理由です。更なる精度向上や更なる更新スピード向上には全地球航法衛星システム(誤差:5cm～5m、更新時間はGPSと同等)を用いたSpace X社のStarlink、準天頂衛星みちびきの活用が必要となります。これに加え、カメラ/LIDARからの周囲情報とコネクティビティを介した他車情報や物体情報(IOT)と高精度3Dマップを用いることでより正確な自車の位置情報を得ることになります。各自動車メーカーの課題です。
⑤通信データー量と速度
各センサー類からの情報が高度化/高分解能化するのに伴ってデーター量は増え、タイムリーに制御するためにデーター送受信速度の高速化が要求されています。しかも、各センサー類からの情報/信号、制御用信号の規格(分解能、サイズ、更新タイミングなど)が統一されていないため、データーの管理も複雑化しています。この点についても各自動車メーカーは最適解を模索している状況です。
以上の課題/ハードルを考慮すると「2025年に自動運転車が登場？」というのは現実的には難しいと思います。レベル3(条件付き自動運転[限定領域])の車種が増えるかも知れませんが…。
以上、Technology/テクノロジー – 「いつ自動運転？」についてでした。
この記事を読むことで、自動車業界の動向を学ぶ際や自動車購入の参考になれば幸いです。
コメント