なぜ日本で電気自動車が普及しない?

今回は「なぜ日本で電気自動車(EV)が普及しない?」についてです。

この記事を読むことで皆様の自動車への関心が深まると幸いです。

現在、世界各国では「ゼロエミッション」方針の基、普及促進が図られ、EUでは既に新車販売台数の約2割をEVとPHEVが占めています。
一方、日本での2022年の新車登録台数では、EVが全体の1.4％、PHEVを含めても約3％でした。 (出典：一般社団法人日本自動車販売協会連合会)

[1] 日本でEVが普及しない主な理由 (ユーザー目線) ①高い車両価格 ②短い航続距離 ③充電ステーション不足

①高い車両価格まず、同じ車格の車で比較した場合、EVの車両本体価格はガソリン車よりも100万円以上高い。
CEV補助金を使っても、軽EVの「サクラ」「三菱eKクロスEV」が上位車格の車と並ぶ程度。
また、バッテリーの寿命(約10年)を考慮すると、リセールバリューの不安や乗り換えサイクル数がガソリン車よりも多くなる可能性がある。また、維持費についてはガソリン車よりEVの方が安く済む可能性が高いが、多くの場合、維持費を考慮しても、ガソリン車との車両価格の差を埋めることは困難。

②短い航続距離 EVの満充電航続距離は国産車で300～400㎞、輸入車で400～600㎞程度。
対してガソリン車は、満タン状態で500～800㎞程度走行可能。走行モードによるが、EVの購入を踏みとどまる理由として想定外の電池切れがある。

③充電ステーション不足次世代自動車振興センターによると、全国に充電スポットは2万1000ヶ所以上あり、これはガソリンスタンドの6割以上の数である（※2022年3月末時点）。しかしながら、地域によって充電スポットの数は異なり、特に地方では充電インフラが充実していないエリアがある。既にEV先進国のノルウェーなどでは「充電渋滞」が起こっていて、今後日本でも、SAの渋滞などがより悪化すると考えられる。充電スピードの短縮も課題。

[2] 普及への課題

車両価格や航続距離については、進んでいる技術開発により近い将来解消されるでしょう。
その裏付けとして、EV車の最も高価な部品であるバッテリー(リチウムイオン電池)の価格は、10年で1/4以下に減少し、今後更に高性能なもの(全個体電池など)、安価なものの採用により、低価格の車両、長い航続距離のものが登場してきます。

また、政治的にも、政府が脱炭素社会の実現に舵を切っている限り、今後は充電インフラが整備され、エネルギー問題についても議論が進むはずです。

[3] 日本でEV普及が進まない理由 (社会視点)

今後は日本でもEVの普及が加速する一方、他国と比較して普及率が上がらないことが予想されます。理由は、日本政府の「2035年までにガソリン車及びディーゼル車の新車販売を禁止する方針」に、禁止対象としてハイブリッド車が含まれていないことがあるからです。

乗用車の新車登録台数の半数をハイブリッド車が占めていて、車両価格もEVよりずっと安いので、今後も多くの日本人がハイブリッド車を購入すると予想されます。

[4] 日本でのEV普及による課題/影響

①電力不足電力供給もEV普及の課題の一つです。日本自動車工業会の豊田章男会長は「国内の乗用車がすべてEV化したら、夏の電力使用のピーク時に電力不足になる」と指摘しています。

②失業者増加 EV化で産業シフト、それに伴う失業者が増加する可能性。
ガソリン、ディーゼルなどの化石燃料車に採用されている部品が、EV採用部品へシフトすることにより部品メーカーの構成は変わり、失業者が増加するでしょう。一方、中国、インドなどは既にEV車開発・製造にシフトしているためこの影響は少ないと思われます。

③日本でのEVはゼロエミッションではない。現在、日本の発電量の84％は火力発電によるもので、車の排気管からCO2を出さない代わりに発電所で出すことになります。

[5] EVを買うタイミング

経済状況や住宅事情によりますが、充電インフラが充実している地域で一戸建てに住んでいるのであれば、購入を検討しても良いかもしれません。ただ、車両価格を考えると、「今が買い時」とは言えず、今後登場する車両価格の様子を見た方が良いでしょう。
まずは国産メーカーの多くがEV発売を目標としている「2025年以降」に注目したいです。

早めにEVを購入したいのであれば、2023年度であれば最大55万円のCEV補助金が受けられる軽EVがオススメでしょうか。