今回は映画「マネーショート (The Big Short)」についてです。
本作を観ることで、投資に関する考え、リスクについて参考になれば幸いです。
ストーリー;
2005年。サンノゼに拠点を置く、型破りな投資家のマイケル・バーリ(クリスチャン・ベール)は格付けの高い不動産抵当証券を調査した結果、驚くべき事実を発見する。
S&Pなど権威ある格付け会社から国債並のトリプルAのランクを付けられ、世界有数の保険会社がこぞって購入している債権が数年以内に債務不履行に陥るだろうという予測に至ったのだ。
これらの商品の共通点はサブプライムローン(低所得者むけ住宅ローン)を含んでいる事。
バーリは、この債権に目をつけ、空売りして莫大な儲けを出すデリバティブ取引(金融派生商品)を思いつく。
それは「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS:Credit Default Swap)」と呼ばれる、発行体のデフォルト(債務 不履行)に対する「保険」(企業の倒産保険)に似た様なもので、住宅ローン債権で銀行が潰れるわけがないと思い込む投資家たちはバーリの申し出を喜んで引き受けた。
ドイツ銀行のジャレド・ベネット(ライアン・ゴスリング)はマイケルの動きに早くから目をつけていた。彼はたまたまの間違い電話で繋がったヘッジファンド・マネージャーのマーク・バウム(スティーブ・カレル)を説得し、CDSの購入を勧める。
一方、カリフォルニアのガレージ裏で、僅か11万ドルの資金からスタートしたコーンウォール・キャピタルの、チャーリー・ゲラー(ジョン・マガロ)とジェイミー・シプリー(フィン・ウットロック)も、サブプライムローンを調査し、その怪しさに気づいていた。
しかし、ウォール街で投資会社として活動するために必要な最低運営資金3000万ドルがないため、彼らは大手銀行のロビーで門前払い、渡されたのは誰も見向きもしない弱小投資家の企画書のみだった。
そんな中、2人はマイケルのCDSの企画書を見つけ、自分たちが言っている事はこれだと見抜き、
ウォール街に本格的に乗り込む為に、金融の師匠で今は表舞台から引退しているベン・リカート(ブラット・ピット)に会いに行くのだが、ベンは乗り気ではなかった。
バームはジャレドにCDSの購入を勧められたものの、今起こっている金融バブルが本当に住宅景気から来るものなのか、それとも、ローンも払えない人間が知恵もなく住宅を購入しているという最悪の事態が起こっているのかを自ら確認しようとする。
バームは、ジャレドのアナリストたちと共に、サブプライムローンを組んだ人間の比率が多いとされるフロリダに向かうと、そこはゴーストタウンと化していた。ローンを払えなかった人々が、コンドバルチャー(取立て屋)によって住む家を追い出された後だった。
2008年。マイケルが予測した様に、次々に投資会社が潰れ始める。彼は、CDSの会社が破綻する前に保険金を回収し、AIGの保険金を空売りし、資本家の元本に充て、自らのファンドを閉鎖した。
チャーリーとジェイミーはベンに頼み、買ったCDSを売り払ってもらう。
ジャレドも自らの持分のCDSは売り払った。残るは史上最大の空売りで儲けを出すと言われるバームだけだった。バームは、これを売ったとしても笑うのは、前に会った合成債権証券を作る悪徳金融マネージャーだけではないかと、不甲斐なさを感じながら世紀の空売りを行う。
感想;
まず、このような難しいテーマを人気俳優を使いエンターテイメント的に分かりやすく映画化している点が素晴らしいです。マイケルの片目が義眼、メタル好きというのがメインの話と直接関係ないのだが、彼が型破りであること表す表現の一環なのでしょう。
さて、マイケルは独自の調査でサブプライムローンの仕組みに欠陥/問題があることを見抜き、近い未来に破綻すると確信し、周りの反対を押し切ってCDSを購入した。その欠陥/問題部分はバリーの調査で分かりやすく伝えられていたが、同時に観る者に米国の金融システムについて不信感を抱かせる内容である。
その他の金融用語として下記が出てきますが、1回観ただけでは理解できませんでした。
・債務担保証券(CDO:Collateralized Debt Obligation);資産担保証券(ABS:Asset Backed Securities)の一種で、発行の裏付けとされる資産が複数の社債や複数の企業向け貸付債権(ローン債権)である証券のこと。
・不動産担保証券(MBS:Mortgage Backed Securities);日本では「モーゲージ証券」とも呼ばれ、資産担保証券(ABS)のひとつで、住宅ローンの元本や利子の返済資金を裏付け資産として発行される証券。米国では住宅ローンの貸し出しリスク分散などの観点から住宅ローン債権の多くが証券化されており、債券市場では米国債と同様、重要な投資対象となっている。
別の映画、「 21世紀の資本」by トム・ピケティや「キャピタリズム マネーは踊る」by マイケル・ムーアでも触れられているのですが、このサブプライムローン問題で、銀行の上層部は一部を除き罪に問われおらず、一部のマネーゲームの勝者が富を独占していることから資本主義社会の闇について問題視されています。
一方でサブプライムローンの利用者は家を追われ、ホームレスになったり、職を失ったりしていますが、サブプライムローン利用者の共通点は、過去5年以内に破産、過去一年以内に30日以内の延滞を2回以上、借り入れが所得の半分と言われ、日本では不動産購入にローンを組めない人々である。
そのような人々に不動産購入の審査書類を適当に書かせた状態(例;映画に登場するバーのダンサーの職業欄は自営業)でローンを組ませて家を購入させ、その審査書類と他のを合わせ100枚くらいにまとめて違う債権に組込むことから、悪徳証券会社は『ニンジャローン』と呼んでいたのが印象的です。
っという感じで、複雑でないことを巧みに専門用語などで複雑にして、利用者に本当の仕組みを分かりにくくしている金融業界の事件について問題提起している映画ですが、日本でも同じようなことがありますよね。銀行で勧められる金融商品などについては特に注意しましょう。
あと、バームのCDS売却をためらうシーンには共感してしまいました。こういった事件で大きく儲ける人がいれば、事件の犠牲者もいると。FIREを目指す者としてはシステムがフェアであることを願うだけです。
以上、今回は映画「マネーショート」についてでした。 本作を観ることで、投資に関する考え、リスクについて参考になれば幸いです。
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