迷惑客はお断り!航空会社の「ブラックリスト」は必要なのか?

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飛行機を利用していると、たまにニュースになるのが、客室乗務員(CA)や他の乗客に対する暴言・威嚇、飲酒によるトラブル、乗務員の指示に従わないなどの「迷惑行為」です。

特に航空機は、一度離陸してしまえば簡単にその場から離れることができません。乗客と乗務員が狭い機内で長時間過ごすため、地上の店舗やホテルとは違った難しさがあります。

こうした「アンルーリー・パッセンジャー(unruly passenger=迷惑・秩序を乱す乗客)」への対策として、欧州では航空会社間で「搭乗拒否対象者の情報を共有する仕組み」について議論が進んでいます。

今回は、この動きについて調べてみました。

航空機内の「迷惑客」が問題になっている

航空会社が問題視しているのは、単なる「感じの悪い客」ではありません。

例えば、

  • 客室乗務員への暴言・威嚇
  • 他の乗客への暴力
  • 乗務員の安全指示に従わない
  • 過度の飲酒
  • 機内での喫煙(電子タバコを含む)
  • 危険物や禁止行為に関するルール違反
  • 機内設備を意図的に破壊する
  • 乗務員の業務を妨害する

といった行為です。

欧州航空安全機関(EASA)も、飲酒・薬物、乗務員の指示に従わない行為、身体的・言語的暴力などを「unruly behaviour」の例として挙げています。EASAは、こうした行為が乗務員の業務を妨げ、安全上のリスクにつながると説明しています。

つまり、

「ちょっとしたクレーム」

と

「航空機の安全運航を妨害する行為」

は分けて考える必要があります。


欧州で「ブラックリスト共有」が議論されている

今回注目したいのが、欧州で検討されている航空会社間の迷惑客情報の共有です。

2025年2月には、欧州議会で「unruly airline passengers」の欧州共通リストについて欧州委員会に質問が提出されました。

その質問では、現在は航空会社がそれぞれ独自に迷惑客のリストを保有しており、情報共有には個人情報保護などの問題があることが指摘されています。

そのため、

A社でトラブルを起こして搭乗を拒否された人が、B社へ行けば普通に搭乗できてしまう

という問題が提起されています。

さらに重要なのが、2026年6月の動きです。

EU理事会の2026年6月8日の会合では、オランダから「航空会社間でno-fly lists(搭乗禁止リスト)を共有すること」について情報提供が行われました。

EU理事会の資料によると、オランダでは迷惑客に関する事案が平均して1日2~3件、月75~100件程度報告されており、近年増加していると航空会社から報告されているとのことです。

ここはかなり興味深い動きです。


ただし「EU共通ブラックリストが決定した」わけではない

ネット上の記事だけを読むと、

「欧州で航空会社共通のブラックリストが導入される」

と受け取ってしまいそうですが、2026年9月時点では、そこまで制度化されたわけではありません。

2026年6月のEU理事会資料は、オランダが「航空会社間でno-fly listsを共有すること」を議題として情報提供したものです。

したがって現段階では、

「欧州で航空会社間の迷惑客情報共有について具体的な議論が進んでいる」

と表現するのが適切でしょう。

これは非常に重要な違いです。


なぜ航空会社共通のブラックリストが必要なのか?

筆者がこの考え方に理解を示す理由は単純です。

航空機では、乗務員が乗客の安全を守るために、一定の権限を持って指示を出す必要があります。

例えば機内で、

「シートベルトを締めてください」

「その行為は危険なのでやめてください」

「乗務員の指示に従ってください」

と言われたときに、それを無視してトラブルを起こす乗客がいれば、本人だけの問題ではなくなります。

周囲の乗客や乗務員にも影響するからです。

さらに、最悪の場合には目的地以外の空港への着陸(ダイバート)につながることもあります。


日本でも「迷惑客」による運航への影響は起きている

日本でも、コロナ禍に非常に象徴的な事件がありました。

2020年9月、ピーチ・アビエーションの釧路発関西行きの便で、マスク着用をめぐって乗客が客室乗務員や他の乗客を威嚇するなどし、機長が安全上の問題があると判断。

航空機は新潟空港へ臨時着陸し、乗客は降機することになりました。124人の乗客と6人の乗員が搭乗しており、関西空港への到着は定刻より2時間以上遅れました。

その後、この乗客は逮捕され、傷害や威力業務妨害、航空法違反の容疑で報じられています。

もちろん、ここで重要なのは、

「マスクを着用しなかったこと」そのものと、「乗務員・他の乗客への威嚇や安全阻害行為」は別問題

ということです。

航空機では、個人の主張の自由だけではなく、他の乗客・乗員の安全確保とのバランスが必要になります。


「クレームを言う客」までブラックリストにしてはいけない

ここは非常に重要だと思います。

航空会社に対して、

「サービスに問題があった」

「料金について納得できない」

「座席について説明してほしい」

などと正当な苦情を申し立てることまで禁止されるべきではありません。

むしろ航空会社にとって、正当なクレームはサービス改善の重要な情報です。

問題になるのは、

正当な苦情ではなく、他人の安全や業務を脅かす行為

でしょう。

例えば、

行為考え方
サービスについて苦情を申し立てる正当な顧客行動
料金について問い合わせる正当な顧客行動
CAに改善を求める内容・方法による
CAを大声で威嚇する問題行為
他の乗客に暴力を振るう深刻な問題行為
乗務員の安全指示を故意に無視する安全上の問題
飲酒して暴れる安全上の問題
運航を意図的に妨害する深刻な問題行為

というように、「何を言ったか」だけでなく「どのような行動をしたか」を見る必要があります。


ブラックリスト制度にも問題はある

一方で、「迷惑客をブラックリストに入れればいい」というほど簡単な話でもありません。

最大の問題の一つが誤登録です。

例えば、

「この人は迷惑客だった」

という航空会社側の判断が間違っていた場合、航空会社間で情報が共有されれば、本人に大きな不利益が発生する可能性があります。

そのため制度を作るのであれば、

  • 登録基準を明確にする
  • 重大性に応じて期間を設定する
  • 本人への通知
  • 異議申し立て制度
  • 誤登録時の訂正
  • 情報へのアクセス権限
  • 個人情報の保存期間
  • 航空会社間での情報利用範囲

などを慎重に設計する必要があります。

欧州議会で2025年に出された質問でも、航空会社間で情報共有する際のプライバシー規則が障壁になっていることが指摘されています。

つまり、

安全のための情報共有

と

個人情報保護

をどう両立させるかが重要になります。


すでに航空会社独自の搭乗拒否は存在する

また、ブラックリスト制度ができなければ航空会社が何もできない、というわけではありません。

航空会社によっては、迷惑行為を行った乗客に対して搭乗拒否や旅行禁止措置などを行っています。

例えばライアンエアーは、2026年2月に、機内で乗客・乗員を暴行して航空機を目的地以外へダイバートさせた乗客について、アイルランドの裁判所が1万5,000ユーロの損害賠償を認めたことを公表しています。

また2026年4月にも、機内で飲酒し、乗客への暴言や乗務員の指示に従わなかった乗客が英国の裁判所で有罪となり、10か月の禁錮刑を受けた事例を公表しています。

つまり、

「機内だから何をしても許される」わけではない

ということです。


航空会社にとっても「迷惑客対策」は重要

迷惑客対策は、単なるサービス品質の問題ではありません。

航空会社にとっては、

安全・定時運航・乗務員の労働環境・他の乗客の満足度

すべてに関係します。

1人の乗客によるトラブルで、

  • 出発が遅れる
  • 乗務員の業務が止まる
  • 他の乗客に不便が生じる
  • 到着が遅れる
  • 場合によってはダイバートする
  • 機材繰りにも影響する

という連鎖が起こる可能性があります。

実際、EASAも迷惑行為が乗務員の業務を妨げ、安全上のリスクを生むと説明しています。


「お客様は神様」から「お互いに尊重する」時代へ

日本では昔から、

「お客様は神様」

という言葉が使われてきました。

しかし、これを文字通り受け取ってしまうと、

「お金を払っているのだから何を言ってもいい」

という誤った考えにつながる可能性があります。

航空会社と乗客の関係も、本来は

航空会社が安全なサービスを提供する
↓
乗客がルールを守って利用する

という相互関係でしょう。

CAは「何でも言うことを聞いてくれる人」ではなく、安全運航を支える乗務員です。

そのため、乗客側にも一定のルールやマナーが求められるのは当然だと思います。


筆者の見解:迷惑客対策には賛成

筆者としては、安全運航を目的とした航空会社間の迷惑客情報共有には賛成です。

ただし、

「気に入らない客をブラックリストに入れる」

という制度には反対です。

あくまで、

暴力・威嚇・重大な安全阻害・乗務員への深刻なハラスメントなど、客観的に重大性を判断できる行為

を対象にすべきだと思います。

また、ブラックリストに入れられた本人が、

「なぜ登録されたのか」

「いつまで登録されるのか」

「間違いではないのか」

を確認できる仕組みも必要でしょう。


ANA SFCなどの上級会員にも関係する話

筆者はANAを利用する機会が多く、ANA SFC会員でもあります。

航空会社の上級会員制度では、ラウンジ利用や優先搭乗、チェックインなど、さまざまなサービスがあります。

しかし、上級会員であっても、

ラウンジや機内でルールを守らなくてよいわけではありません。

むしろ、航空会社との関係が深い上級会員ほど、他の乗客の模範となるような利用をしたいものです。

マイルやステータスを大量に持っていたとしても、安全運航を妨げる行為が許されるわけではありません。


これからは「乗客の質」も航空会社選びのポイントになる?

今後、航空業界では、

「どの航空会社に乗るか」だけでなく、「どんな乗客と一緒に乗ることになるのか」

もサービス品質の一部として考えられるようになるかもしれません。

航空会社にとっては、

  • 客室乗務員が安心して働ける
  • 他の乗客が安心して旅行できる
  • トラブルによる遅延を減らせる
  • 安全性を高められる

というメリットがあります。

一方で、過剰な規制は顧客の正当な権利を損なう可能性があります。

したがって、今後のポイントは、

「迷惑客を排除すること」ではなく、「何が許容されない行為なのかを明確にすること」

なのではないでしょうか。


まとめ:「迷惑客はお断り!」はどこまで許されるのか

今回は、欧州で議論されている航空会社間の「no-fly lists(搭乗禁止リスト)」について調べてみました。

2026年9月現在、EU全体で航空会社共通のブラックリスト制度が導入済みという状況ではありません。一方、2025年には欧州議会で共通リストについて問題提起があり、2026年6月にはEU理事会でもオランダから航空会社間のno-fly lists共有について情報提供が行われています。

今後、制度化が進むのであれば、

「安全を守るための仕組み」

と

「乗客の権利・個人情報保護」

の両立が重要になります。

筆者としては、

普通に旅行している乗客が安心して飛行機に乗れる環境を守るため、重大な迷惑行為に対する航空会社間の情報共有はあってもよい

と考えています。

「お客様は神様」ではなく、

「乗客も航空会社も、お互いを尊重する」

という時代になっていくのではないでしょうか。

飛行機は、ホテルやレストランとは違い、離陸してしまえば途中で簡単にサービスを停止できない特殊な空間です。

だからこそ、

「迷惑客はお断り」

という考え方が、これからの航空サービスの重要なテーマになっていくのかもしれません。

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プロフィール
著者
diamondken

完全FIREを目指している一般独身男性。
約30年、自動車業界/外資系自動車部品メーカーに従事。
自動車用電装部品の開発にてSW, HW, SYS, PMを経験/担当し今に至る。
趣味はテニス、映画/音楽鑑賞、ゲーム(PS)、読書、旅行、楽器/エレキギターなど。
完全FIRE/経済的自立を実現すべく、資産運用、副業、投資、税金について勉強中。
TOEICスコア: 960

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